118 カテーテルアブレーション ~細長い管を心臓まで 不整脈を診断し治療

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 不整脈は、「脈が速くなる不整脈」と「脈が遅くなる不整脈」に分けることができます。このうち「速くなる不整脈」については、「カテーテルアブレーション」という治療で、完全に治すことが可能なものがあります。

先端の電極を壁に
 心臓は規則正しく収縮と拡張を繰り返し、全身に血液を送り出すポンプです。正常な状態では、心臓の上部にある「洞結節」と呼ばれる司令塔から、一定の間隔で電気刺激が発生します。この電気がポンプに当たる筋肉に伝わることで、心臓は収縮しています。

 司令塔以外の場所から異常な電気刺激が発生したり、電気が心臓の一部でぐるぐる回り始めたりすると、脈の乱れや極端に速い不整脈が発生します。

 カテーテルアブレーションは、「電極カテーテル」と呼ばれる太さ1・3~2・6ミリの細長い管を、脚の付け根や首の静脈から血管内に通し、そのまま心臓まで進めます。

 カテーテルの先端には電極が付いています。それを心臓の壁に押し付けることで、心臓内の電気現象を解析・記録したり、心臓に電気刺激を与えたりすることができます。

 複数の電極カテーテルを使って心臓の電気の流れを調べたり、電気刺激に対する反応をみたりすることで、どんな不整脈が起きているのかを診断し、治療する場所を確定します。治療部位が確定したら、そのまま「アブレーション治療」に移ります。

他器官の不調改善も
 アブレーション治療は、専用の電極カテーテルを目的の場所へ持っていき、先端から高周波電流を流します。この通電により、カテーテルの先端が接している5ミリほどの範囲の心臓壁が50度から60度に熱せられます。点状の低温やけどが生じると考えてください。異常な電気信号の発生部位や通り道に当たる心筋細胞を熱で凝固させることで、不整脈が起こらないようにするのです。

 1カ所の通電で十分なこともありますが、不整脈の種類によって線状に何カ所も通電する場合があります。検査と治療にかかる時間は2~4時間ほどです。

 カテーテルアブレーションの対象となる病気は、発作性上室性頻拍、心房粗動、心房細動、一部の心室頻拍などで、最近は高齢者に多い心房細動に対する治療が増加しています。この治療により、内服薬を減らしたり、不整脈によるほかの器官の不調を改善したりすることができます。

笠井俊夫=循環器内科部長・心臓血管センター長=専門は循環器
 
知っておきたい医療の知識