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2017年冬02 スギナモ ~南限で湧水と共に

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 須坂長野東インター(須坂市)の北東一帯は、峰の原高原を源流とする鮎川の扇状地で、冬でも枯れない湧水が幾筋も流れ出る。水温は12度前後とほぼ一定した川幅の狭い小川に、希少種「スギナモ」が生育している。

 水生植物で水中では長さが約50センチにも伸び、止水域では茎の上部が直立し、その姿が「スギナ」に似ていることから和名がある。北半球のシベリアやアラスカ、国内では北海道や東北などの寒冷地に分布。「県内ではここだけ」とされる須坂市が南限だ。

 同市内の生育場所は5カ所。幸高の「御手洗川」と名が付く場所の歴史は古い。川幅数十センチの中にバイカモやオランダガラシなどと共生し、源流はすぐ上流の越智神社の池だった。「越智池と呼ばれ、50~60年前までは水があり、子どもたちが泳いだ」という。今は枯れて、神社西の民家の池に源を譲っている。

 近くの農業山岸清美さん(83)によると、豊富な清水は大正年間から昭和初期にかけて、製糸工場が操業、ニジマスの養殖やワサビ栽培などに利用された。産卵のため、サケも千曲川から遡上してきた。

 住民とともに歩んできた湧水域に生育するスギナモだが、2002年刊行の県版レッドデータブックでは「絶滅」とされた。「1962年に須坂市で採集された以後、確認されていない」が判定理由だが、長野市の元校長宮入英治さん(85)が須坂市内にあることを指摘。県環境保全研究所とともに調査、確認した。15年に改定されたレッドリストで、絶滅危惧1Aにランクされている。

 生育場所は限られるが、「夏には結構伸びて繁茂する」と地元の人。湧水がスムーズに流れるように、昔から近隣の住民らが年2、3回刈り取りなど川を整備している。
(2017年12月23日掲載)

写真=川べりの止水域で直立するスギナモ。高さは20センチほど=須坂市幸高の御手洗川で11月26日撮影
 
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