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111 アイルランド キルメイナム刑務所 ~独立目指した蜂起を伝える

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 意外なことに、アイルランドの首都ダブリンの観光スポットで一番人気なのは刑務所だという。ダブリンの西郊外の住宅地にあるキルメイナム刑務所は、当然、壁に囲まれている。これがなぜ、ナンバー1かというと、アイルランドの人々を奮い立たせてくれる場所だからだ。

 ここの中心テーマは、1916年の「イースター(復活祭)蜂起」である。所内の見学ツアーがあるほか、隣接の歴史博物館で内部の様子を知ることができる。昨年は蜂起から1世紀。上智大学では、それを記念し、アイルランドに関するイベントが開かれた。

 当時、イギリスの圧政に苦しんだアイルランド人は、独立を目指して、イースターの4月24日に一斉蜂起した。教師兼弁護士のパトリック・ピアーズとジェームズ・コノリーが率いる義勇軍と市民軍。さらに、200人の女性軍がイギリスからの独立を宣言した。

 蜂起の重要な舞台になったのは、中央郵便局である。外壁に弾痕が数多く残る。この日、臨時大統領としてピアーズが「共和国宣言」を、局舎の正面で読み上げた。局内の壁には、英語とゲール語で書かれた宣言文がはめ込まれている。

 1週間で蜂起は鎮圧されたが、一気に機運が高まり、6年後に独立を果たした。蜂起は「アイルランド・ライジング」として2001年に映画化。18歳で義勇軍に合流したアーニーを主人公に描き、DVDのキャプションには「暴動ではない。それは自由への闘争」とある。

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 キルメイナム刑務所では、蜂起の指導者たちが処刑された。見学ツアーの最初は、指導者プランケットが処刑3時間前に結婚式を挙げたチャペル。花嫁は画家のグレイス・ギフォードで、独房には彼女が描いた聖母子像も残っている。ツアーの最後は処刑場。石の壁には散っていった19人の名前が刻まれている。

 隣の博物館には、当時の写真や遺品とともに、刑に赴く市民軍らの指導者や女性たちの「最後の手紙」が展示されている。

 目立つのは「1916」の数字。地方から来た中学1年生の4人組は、学校や親から「一度は見てきなさい」と勧められたという。「ここは、平和に暮らせている今の私たちの原点。1916年の意味を身近に感じることができた」。そう話して、1916の掲示板の前でポーズをとってくれた。
(2017年12月2日掲載)

写真上=蜂起の指導者が処刑されたキルメイナム刑務所
写真下=「1916」が目立つ歴史博物館の展示室
 
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