松本市の浅間温泉で11月中旬に学生時代の集まりがあり、1泊した翌日戸谷峰(1629メートル)に登った。松本市街地から美ケ原を望むと、左手に屏風のようにどっしりと構える山だ。
9時半に宿を出て、国道254号を三才山峠に向かう。トンネル手前の道路脇の広い場所に車を置き、100メートルほど先の野間沢橋まで歩く。右側は女鳥羽川上流のV字谷。大型トラックが猛スピードで走ってきて危険だ。
標高千メートルの看板がある橋手前の鉄製階段が登山口だ。階段を上り、幅の狭い送電線巡視路を進む。すぐ下に国道が通っているので、落石に注意が必要だ。
しばらく登っていくと、登山道脇に長さ20センチほどの白骨があるのを発見。すわ人骨か、と辺りを見回したが、ほかには何もない。

同行した医師で友人の見立てだと、大型動物の下腿骨のようだ。あまり気持ちのいいものではないので、近くの岩穴に納める。
間もなく沢筋の上りとなる。左斜面には岩崩れの長い跡が見えてくる。右折して、左手に赤松林、右手にカラマツ林が続く尾根を登っていくと、3基あるうちの最初の鉄塔L71に。ここが、ほぼ中間点だ。
休憩の後、さらに急斜面をジグザグに登ると、L72、L73の鉄塔が現れる。その先は快適な山道で、初夏にはニリンソウの群生が見られるという。
頂上が近くなると、雑木林の落ち葉が厚く積もり、道が分からなくなる。木の枝に結ばれたピンクのリボンを頼りに進む。滑りやすい最後の急登を終えて山頂に出た。
樹木が切り払われた西側には、雲の帯の上に北アルプスの山並みが連なる。正面に槍ケ岳、その南には穂高連峰。真っ白な乗鞍岳もよく見え、眼下には安曇野が広がる。
東には美ケ原の武石峰、北側には浅間山や上田盆地も。期待していた通りの眺めだ。
ここまで誰にも会わなかったが、眺望を楽しんでいると、違う方向から男性が2人登って来た。聞けば、麓の一の瀬集落からのルートがあるという。
まだ正午前だったため、L72の鉄塔まで下り、コンクリート製の土台に座って昼食に。登って来た道をそのまま駆け下り、13時半には下山口に着いた。
(横前公行)
(2017年12月5日掲載)
写真上=正面に槍ケ岳を望む山頂。眼下に安曇野が広がる
下=3基の送電線鉄塔の下を登る