
ジャコウネコ科のハクビシンは、一見タヌキやアナグマと見間違えやすい。額から鼻にかけて「白鼻芯」の和名の由来でもある縦の白い筋があれば、ハクビシンと分かる。体長は60センチほど、尾は40センチほど。毛の色は灰褐色から黒色と、個体差がある。
東南アジアやヒマラヤ、中国南部などが原産。県内では30数年前、県南で多く見られ、珍獣扱いで、1975年に県天然記念物に指定された。だが、繁殖力旺盛であっという間に北上。全県に広がった。
山里が主な生息域だったが、近年は市街地に頻繁に出没。長野市内では2007年ころから目立つようになった。南堀の変電所で停電騒ぎを起こしたり、田町や上松の民家にリンゴを狙って現れたり。交通事故死などの目撃情報が相次いだ。
木登りが得意で、リンゴや柿の木、ブドウ棚などを巧みに登り、果実を標的にする。空き家や民家の屋根裏をすみかとし、住人は騒音やふん、ダニなどの被害に悩まされている。
国は15年に「重点対策外来種」に指定。長野市いのしか対策課によると、有害鳥獣としての駆除数は106匹だった11年度から、2年ほどで2倍以上に。しばらくほぼ同数だったが、16年度に290匹と、再び増える兆しだ。
昨年暮れ、長野市内の寺で自動撮影装置を撤去しようとした白昼、ハクビシンが走り去る姿を目撃した。しかし、歩き方が変だ。写真を見ると、左前足がほぼ付け根からなく、右足首も変形。同市猟友会の掛川健一さん(73)=小柴見=は「くくりわなにかかり、感覚が無くなってから、自分で食いちぎった可能性がある」と、どう猛な性質を指摘する。生命力に驚くと同時に、増え過ぎて駆除される現実に複雑な思いがする。
(2018年1月20日掲載)