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2017年冬04 ベニシダ ~気候変動を示す指標植物

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 年末年始の寒波ですっかり雪景色となった須坂市の臥竜公園。池に隣接した臥竜山の斜面に茂るベニシダを、5年ぶりに訪ねた。群落は数十株に及ぶだろうか、長さ1メートルほどにも達する常緑の青々とした葉が斜面に沿って折り重なっていた。前よりサイズが大きくなり、勢いが増している感じだ。

 暖地性植物で、県内では伊那谷や木曽地方など南部を中心に見られたが、北信では地球温暖化が進み始めた1990年代から目立つようになった。臥竜山では、シダ類研究約50年の元県環境保全研究所(植物担当)の大塚孝一さん(66)=長野市=が2000年、神社林など県内100カ所を調査して見つけた。北信ではほかに、長野や飯山、中野市や、信濃、飯綱町、高山村などで確認された。

 常緑で枯れることがなく、雪の下でじっと春を待つ。暖かくなると、新しい芽が出て世代交代。伸びた葉が紅色をしていることからベニシダの和名があり、園芸種も市販されている。受精しなくても繁殖するための胞子体を作ることができ、乾燥した場所でも育つので、「温暖化など気候変動を見定めるのに格好の指標植物」と大塚さん。

 その後の変化を検証した11年の調査で、臥竜山のベニシダは2倍以上に増えたことが判明。じわじわと進む温暖化を具体的に示す貴重なデータとなった。

 さらに、群落の周辺に中小の「独立株」が点在。温暖化が進んで、群落を形成して増殖すると、ほかのシダ類と競合する可能性があると指摘している。

 ほぼ10年ごと、3回目となる調査は20年をめどに予定している。大塚さんは、個体数の増加や新しい生育場所、寒冷地や標高の高い場所での発見に期待している。

写真=群落を形成したベニシダ。斜面で、葉が横に張り出すように長く伸びている=須坂市の臥竜山で1月3日撮影
 
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