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2017年冬07 スズメ ~環境の変化で減少傾向

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 200~300羽にもなるスズメの大群の大合唱が、民家近くの開けた田園地帯ににぎやかに響く。電線や空き地の雑草、葉が落ちた樹木などに次々と移っていく。時折、田んぼや畑に残った穀類や草の実などをあさる。

 体長14センチほど。国内にいるスズメは「山のスズメ」で、英名「ツリー・スパロー」。単にスズメと呼ばれて、人間が生活する周辺に生息する。仲間に、夏鳥として本州中部以北の主に山地で繁殖し、冬季は南下する「ニュウナイスズメ」がいる。戸隠高原などでも見られる。

 ほかに「イエスズメ(英名ハウス・スパロー)」がいるが、生息分布はヨーロッパや東南アジア。日本ではまだ定着していない。

 そのイエスズメの雄を1990年、スズメ研究の先駆者でもある日本鳥学会会員の佐野昌男さん(78)=長野市篠ノ井=が、北海道利尻島で初めて記録した。その後、北海道積丹半島や礼文島、秋田県などで確認されているが、「日本のスズメとの交雑や居場所など未解明な部分が多い」という。

 研究が海外に及ぶ佐野さんは1984年からバンコクなどに足を運んでいる。2016年にはマレー半島の稲作地帯で、インドから東南アジア一帯に生息し、世界一美しいとされるスズメ「マキエスズメ」を写真に収めた。さらに同年には台湾で、日本のスズメと比べてくちばしが太く、顔の黒斑が広いなどの特徴があるスズメを発見。「新亜種ではないか」と論文にまとめている。

 佐野さんは、8年前には篠ノ井瀬原田地区でスズメの出現数を調査。繁殖やねぐら、逃げ場などが違う旧来の集落の方が、隣接する新興住宅地より圧倒的に多かった。

 冷暖房が完備し、家屋の隙間をなくした近代建築への変化がスズメを寄せつけず、数は減少傾向という。
(2018年2月3日掲載)
 
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