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2017年冬09 トモエガモ ~辰巳池に多数が飛来

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 長野市吉田の辰巳池。岸辺から張り出した氷の水際に、オナガガモやヒドリガモ、コガモなどに交じり、県版レッドリストで絶滅危惧ⅠB類指定のトモエガモが年明けから姿を見せている。

 全長40センチほど。雌雄異色で、雄の顔に黒、緑、淡黄色の巴模様からトモエガモの和名がある。シベリア東部で繁殖し、冬になると南下し、中国や韓国、日本で越冬する。

 冬季、国外では数千、数万規模の群れで行動する。2000年秋、韓国で鳥コレラが発生し死んだ1万2千余羽の9割がトモエガモだったという報告がある。

 南下するほど数が減るとみられるが、日本では主に日本海側に飛来、石川県加賀市の片野鴨池が国内最大の越冬地とされる。長野県内では千曲川や犀川、天竜川の河川、諏訪湖やため池などで見られるものの、数は極少。記録はほとんどが一けたで希少種扱いだ。

 今季、辰巳池で最初に観察されたのは1月9日。連絡を受けた日本野鳥の会長野支部幹事の玉木征幸さん(72)が翌日、雄3羽を確認。14日には雄8羽、雌6羽の計14羽を確認した。これまで同池で玉木さんが記録したのは2012年、14年の2回だけで、いずれも雄1羽。「こんなにたくさん来たのは初めて」とびっくりしている。

 信州野鳥の会前会長の丸山隆さん(68)=松本市=によると、中信でも安曇野市や奈良井川などで確認されているがほとんどが1羽で、最大でも8羽。「二けた台はすごいですね」

 多い理由ははっきり分からないとした上で、県環境保全研究所の堀田昌伸さん(鳥類生態学)は「遠目ではコガモと区別が付かず誤射の可能性があり、猟期中は辰巳池が安全な休息場所だからではないか」と分析している。
(2018年2月17日掲載)

(「冬」シリーズおわり。「春」は3月31日号から掲載予定です)
 
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