肺がんは、部位別のがん死亡数で第1位のがんです。生存率の高い乳がんや大腸がんなどと比べると、治療成績はまだまだ満足できるものではありませんが、より有効な治療を求めて研究が進められています。
手術には条件も
肺がんの治療法には、手術、放射線、抗がん剤の3つがあり、がんんの種類や進行度、患者さんの全身状態を考慮して選びます。
このうち手術は、がんを完全に取り除くことを目的に行われますので、治療効果の高い方法といえます。
ただし、手術を行うには、(1)小細胞がん以外のタイプ(非小細胞肺がん)であること(2)臨床病期(進行度)がI期、II期とIII期の一部であること(3)患者さんの全身状態が手術に耐えられること―という条件があります。
手術は、肺の切除量が少ない方から順に、(1)部分切除(2)区域切除(3)葉切除(4)肺全摘―に分類されます。肺がん手術の標準的な方法は、リンパ節郭清(かくせい)(切除)を伴う葉切除以上の手術とされています。
しかし、画像診断の進歩に伴って、悪性度が低い、すりガラスのような陰影が主体の病変が早い段階で発見できるようになりました。こうした場合には、呼吸機能をできる限り残すために、切除量の少ない部分切除や区域切除の手術も検討されるようになってきました。長野市民病院でも根治性と機能温存のバランスが取れた区域切除を積極的に行い、肺がん手術の約2割を占めるようになっています。
増える胸腔鏡下手術
手術の方法は(1)開胸手術(2)胸腔鏡(きょうくうきょう)下手術(VATS)(3)ロボット手術―の3つがあります。
このうちロボット手術は保険が適用されないため、当院では開胸手術とVATSを行っています。近年では開胸手術が大幅に減少し、VATSが約9割を占めるようになりました。
VATSは、胸部に2センチから4センチほどの穴を4カ所開け、そこからカメラと操作器具を挿入し、テレビモニターを見ながら手術を行います。
傷が小さく、痛みが少なく、体への負担が小さいことが最大の利点です。ほとんどの患者さんが手術の翌日から食事や歩行ができるようになり、経過に問題がなければ、術後約1週間で退院できます。退院後も日常生活に支障が出ることはほとんどありません。
当院では、これからも皆さんに安全で質の高い肺がん手術ができるように努力を続けていきます。