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2018年春02 フクジュソウ ~地元で自生地を守る

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 長野市大岡日向地区の丘陵地帯。点在する民家裏の畑、傾斜のある土手一帯にフクジュソウの自生地が広がる。面積は約2千平方メートル。観賞用に設けられた道の最上部は「ひなたアルプス展望公園」で、北の白馬三山から南の常念岳まで北アルプスのパノラマが望め、残雪の白と黄色の花が絶妙のコントラストを演出している。

 咲き始めは2月下旬。3月21日には今年で3年目となる「福寿草まつり」が開かれた。降雪で、満開の花はしぼんで雪の下に。雪解けの24日に再び開花。花から花へ無数のミツバチが飛び交い受粉、花の終わりを告げていた。

 フクジュソウは、キンポウゲ科の多年草で高さ10センチ前後、花径は3~4センチ。県内には多くの自生地があり群生しているが、採集や踏み付けが危惧され、県版レッドリストで「準絶滅危惧種」にランクされている希少種だ。

 「地域が元気になる核はないか」。高齢化が進み、子どもがいない日向地区がフクジュソウに目を付けたのは5年前。ちょうど花が咲く年度末の会議の日、花見をした後の懇親会で、フクジュソウを生かそうという機運が盛り上がった。

 荒れ放題の自生地一帯のやぶ払いや草刈りを開始。翌年には隣接する「芦沼北団地」とともに「大岡ひなた福寿草保存会」を結成。観賞用の道も整備した。3年前、春分の日に行われていた行事に合わせ「福寿草まつり」を初開催。地元の米や野菜、特産の「やしょうま」などを販売し、とん汁も振る舞った。

 「当面は増やすことに力を入れたい」と待井吉久会長(65)。縁起物として正月を飾り、別名「元日草」とも呼ばれるフクジュソウ。地区の幸せと長寿を願う息の長い取り組みは始まったばかりだ。
(2018年4月7日掲載)


北アルプスのパノラマを背景に黄色がさえるフクジュソウ=長野市大岡日向で3月24日撮影
 
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