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121 アイルランド・旅の出会い ~平和な生活願うドライバー

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 旅の面白さの一つは、人との出会いだろう。コークからダブリンに戻るのに、長距離バスを利用した。ドライバーのマイケルさんは、北アイルランドのポートラッシュ出身。私が宿を取った漁村だ。

 最前列で彼の横に座った。「アイルランドを気にいってくれたかい」という彼の言葉で始まった2時間ほどのやりとり。彼が語った一つ一つは、アイルランドの旅を締めくくるのにふさわしかった。

 北アイルランドでは「英国からの分離・アイルランド併合」の少数派キリスト系住民と、「英統治存続」のプロテスタント系住民が対立。包括和平合意(1998年)までの約30年間で約3600人が死亡したという激しい紛争があった。

 「今は紛争も落ち着いたしね。この島が好きだ」。北から南へ移ったマイケルさんの言葉からは、アイルランドの今、人々の思いが伝わってくる。マイケルさんの話を紹介しておきたい。

 ― 故郷の吊り橋「キャリック・ア・リード」は、怖くて一度も渡ったことはないけれど、観光客には人気。日本人はあまりこないけれど...。もっと日本人にこの国を知ってほしい。

 ― 残念ながら、道路標識に併記してあるゲール語の文字は普及していないな。英語で事足りている。ゴールウエイやコークなど、西南部ではまだ大事にされているけれど、普及させるのは難しいだろうな。

 ― この国にはイエーツやジェームス・ジョイスらの文学や文化が根付いていて、詩的な美を大切にしている。

 ― アイルランドでは、大きな町ごとに、ホッケーに似たハーリングという競技が盛んだ。サッカーのように、ほかのチームに選手が移籍しない。郷土のチームに居続けるのだ。

 マイケルさんは、ダブリンへの途中の町についてもさまざまなことを教えてくれた。石炭産業が衰退しても泥炭にこだわっている人がいることや、中世の雰囲気が色濃く残る町キルケニーの歴史といった具合だ。

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 印象的だったのは、アイルランドと北アイルランドの対立に関する話である。

 ― 北の「ロンドンデリー」という町で、英軍が公民権を求めた市民に発砲し、7人が死亡した。映画にもなった事件だ。もとは「デリー」という町だ。南に移住して「デリーをロンドンデリーと呼んだらもう付き合わないぞ」って言われた。反英意識の強さが南に住んでみて分かった。

 そして、マイケルさんはこうも話した。
 ― 宗教問題はもうたくさんだ。今の平和な生活を続けたい。

「アイルランド一周」おわり

上=ダブリンまでのバスドライバー、マイケルさん
下=途中の道路にはゲール語が表記された標識も
 
ヨーロッパ美の旅