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2018年春06 マルミノウルシ ~生育場所限定の希少種

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 北信地方南部の林内に、県内での生育地が限定され、県版レッドリストで絶滅危惧IA類にランクされている希少種「マルミノウルシ」が群生する。日本固有種で、トウダイグサ科の多年草。和名は「丸実野漆」だ。

 近縁種のノウルシは、実(子房)の表面にいぼ状の突起があるのに対し、丸く滑らかなことに由来する。春先に出る芽は紅色で「ベニタイゲキ」とも呼ばれる。高さ50センチほどに成長した茎や葉を切断すると、乳状の液が出る。触れるとかぶれる。

 ここの生育地は岩石がガラガラと崩れそうな急峻な場所で、コナラやケヤキなどに囲まれて、面積は約800平方メートル。芽吹き前の3月初め、10年ぶりに訪れると、芽を出した紅色が林内で異彩を放っていた。1カ所に10数本の大株が見られ、以前に比べて小さな芽の単独株があちこちに点在。「少しは増えている」と、一安心した。

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 当時、場所を漏らさないことを条件に、市担当者の吉迫由美さんが案内してくれた。吉迫さんは、市のレッドデータリストを作成していた2008年、ほかの希少種を探している時に偶然見つけた。県内では約40年ぶりの確認だった05年に続く発見だった。

 リストは11年に完成。レッドデータブックとしてまとめられた。吉迫さんは担当が変わってからも、活動を続けている。11年度からリスト内の約300種の数や増減、広さ、周辺の環境や植物相などを調査し、変化を追い続けている。

 マルミノウルシは、株数は増えているものの、生育場所が広がる兆候は見られない―と吉迫さん。「生育条件が限定される難しい植物」と分析している。
(2018年5月12日掲載)

上=名前の由来となった丸い実。径は3~4ミリ(4月30日撮影)
下=芽吹きは鮮やかな紅色(3月11日撮影)
 
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