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2018年春07 シナノタンポポ ~外来種侵入で交雑進む

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 あちこちで黄色の花や綿毛がにぎやかなタンポポ。キク科の多年草で、国内では北海道のエゾタンポポから九州のツクシタンポポ、高山のミヤマタンポポ、里のカントウタンポポなど、さまざまな地域や環境の下で生育している。亜種や変種、外来種を含めると、約30種類にもなる。

 県内でよく目にするのは、飼料や食用として19世紀末に導入されたとされる欧州原産のセイヨウタンポポ。1株だけで種(種子)をつくって増殖し、春を越しても開花するなど、繁殖力は旺盛で、道端や空き地、造成地に侵入し群生する。開発や都市化の環境変化を見る指標植物とされる。

 セイヨウタンポポが在来のタンポポを駆逐して分布を広げる中で、県内を中心に中部地方に多く生育するシナノタンポポも、ひっそりと命を紡ぐ。カントウの亜種とされる。開花は春だけ、最低2株がないと交配できないなど、繁殖は劣勢ではあるものの、里山周辺で頑張っている。

 両者の違いは、花の基部の総苞片(そうほうへん)の反り返りで容易に識別できる。7年前、長野市篠ノ井有旅の茶臼山動物園近くで撮影した畑地に4月末、足を運んだ。セイヨウに混じり、シナノが数株確認できたが、数は減ったように感じた。

 戸隠地質化石博物館で植物担当の研究員中村千賀さんが2009年、戸隠地区の85カ所で、分布を調査したところ、セイヨウが6割以上、シナノは3割足らずだった。山里とはいえ、道路工事やほ場整備といった開発の影響が裏付けられた。

 あれから8年。「交雑が進み、純粋なシナノはさらに減っているのでは」と中村さん。同博物館ボランティアらに協力してもらって調査を再開し、変化を比較してみたいという。
(2018年5月19日掲載)

写真=総苞片に反り返りがない在来のシナノタンポポ=長野市篠ノ井有旅で=4月30日撮影
 
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