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124 サンマルコ広場 ~「世界最高」とナポレオン

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 ナポレオンに「世界最高の広間」と言わしめたのが、サンマルコ広場だ。ここはかつて祭礼や行事の場であった。騎士の馬上やり試合や奴隷売買の市場が開かれるなど、島の中心地。一見すると、長方形だが、実際には幅52~80メートル、長さが175メートルもあり、先がつぼまった不等辺四角形だ。錯覚を利用した工法で、同じような造りは、京都の竜安寺石庭にうかがうことができる。

 トルコとの戦いでベネチアが疲弊したのに乗じて、ナポレオンが攻め入って制圧し、その支配下に置いた。

 海に浮かんだ島自体がまれなのに、大理石や敷石を地面に敷き詰めたこの広場に立つと、開放的になる。アドリア海の潮風を感じ、正面にサンマルコ寺院、右手には高くそびえる鐘楼を見やりながら、キリスト教世界とは少し異色な文化の雰囲気を味わえる。

 広場の海側に立つ鐘楼「カンパニーレ」に上がった時に、それを一層強く感じた。行列に並び、エレベーターで最上階に着くと、眼下のサンマルコ寺院の屋根はことごとく円形だ。丸屋根はビザンチン様式の象徴。右手には明るいアドリア海が広がる。

 広場の三方には、アーケードが広がる。北側は12世紀に造られた旧行政官の館、向かいの南の館は16世紀創建の新行政館。西の館は舞踏会などのためにナポレオンが建てさせたという「ナポレオン翼」がある。

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 広場にあるカフェの一つがカフェ・フローリアン。キャサリン・ヘプバーン主演の名画「旅情」に登場する名所で、これを目当てに立ち寄る旅行客も多い。カフェ・ラテ発祥の店でもある。広場では、人になれた無数のハトが観光客に餌をねだっている。

 私がサンマルコ広場を初めて訪れたのは、高校生らを案内した時だ。その印象を南沢晴海さん(長野市篠ノ井)は「日本とは違う別世界。夢の国へ来た感じだった。車が入れないので自分の足だけで歩き、迷路のような道に楽しさがいっぱいの島。わくわくした」と懐かしく語っている。
(2018年5月19日掲載)

写真上=祭礼や行事の場だったサンマルコ広場
写真下=三方に広がるアーケード
 
ヨーロッパ美の旅