
寒の戻りとなった4月上旬の日曜日、山仲間4人で上田市の太郎山(1164メートル)から虚空蔵山(1077メートル)を縦走した。国道18号を坂城町から上田市へ入ると、すぐ左手に急しゅんな岩肌が屏風のようにそびえるのが虚空蔵山だ。
朝起きると、大粒のぼたん雪がざんざん降っている。今日は無理かなと思っているうちに小やみになり、長野市内を8時に出発するころには晴れてきた。
2台の車に分乗し上信越道を坂城インターで降り、太郎山の表登山道口へ。合流に手間どり、弁当を買ったりしていたため、9時40分に登り始める。太郎山は「上田市民の山」とあって、斜度はきついものの、道幅は広く登りやすい。
約100メートルごとに22の丁石祠が設置されており、登山者を励ましてくれる。足元にはスミレが咲き、ツツジなど低木の芽吹きが始まっていた。

太郎山神社の赤い鳥居をくぐり、社殿の右脇を抜けて芝生に覆われた山頂へ。上田盆地の絶景を見下ろし、行動食のおにぎりを一つ食べて虚空蔵山への縦走路に入る。
斜面を下りきると、緑ケ丘登山道と合流する西峠に。さらに進むと、秋和登山道との合流点へ。その先の看板を読んで驚いた。標高約千メートルの一帯には、かつて開かれた桑園が放置されて野生化し、100本を超えるクワの巨木が林立している。
縦走路には随所に山城跡があり、戦国時代に坂城を拠点とした村上氏の連珠砦だったという。眺めのよい虚空蔵山の手前の山城跡で昼食を取っていると、小雪が舞ってきた。
天気が変わってきたので先を急ぐ。「大のぞき」という崖っぷちの細い道を、ロープを使って越えると、程なく虚空蔵山の山頂だ。振り返ると、太郎山の斜面に白いコブシの花が点々と咲いている。
岩頭を登り詰めると、抜群の眺望が開ける。中央に千曲川が流れ、その向こうに塩田平。東側には東御市から佐久市方面まで望め、箱庭のようだ。

山頂付近の山城跡やカタクリの群生地を見た後、急斜面の座摩(ざますり)神社コースを下る。
途中、仲間の一人が大きくせり出した岩峰の「兎岩」へ偵察に行く。戸隠山の蟻の塔渡りのようだという。樹間越しに大岩壁の「大岩」を眺めながら、ひたすら下って麓の座摩神社へ。養蚕の神をまつる立派な社殿だ。
帰路、坂城町の温泉に立ち寄って長野へ戻った。
(2018年4月28日掲載)
写真上=急斜面が続く山頂直下の兎岩から見下ろす
下=かつての桑園が野生化し、クワが巨木に