
岐阜県東部にある恵那市岩村町を訪れた。同町は現在放映中のNHK連続テレビ小説「半分、青い。」で、主人公が生まれ育った町という設定でロケが行われ、町並みが注目されているという。
中央西線恵那駅で明知鉄道に乗り換えた。1両の小さなディーゼルカーが、のどかな田園風景を走る。ひたすら勾配を登り続けること30分、岩村駅に到着した。長野駅から約2時間半。低い山が四方を囲む小さな町だ。
岩村町の歴史は鎌倉時代までさかのぼる。文治元(1185)年に源頼朝からこの一帯を与えられた加藤影廉が岩村城を築いたとされ、戦国時代は武田氏と織田氏の攻防の渦中に置かれた。江戸時代は岩村藩となり、城下町を形成。地域の中心として栄えた。岩村本通りは当時の商家が数多く残り、文化庁の「重要伝統的建造物群保存地区」に指定されている。

駅から数分で本通りへ。ゆるやかな傾斜と曲がった道に2階建ての家が連なる。通りは中ほどの升形(防御のために屈折させた道)を境に、町並みが異なっている。駅側は明治時代に大火に遭い、その後再建。昭和の雰囲気が色濃く残り、懐かしい光景だ。ドラマではこの一帯がロケ地となり、観光客が写真を撮ったり、家の外観を眺めていた。店で話を聞くと、ドラマ開始以降、訪れる人が大幅に増えたという。
升形を過ぎると、町の様子は一変した。山を背に、宿場町を思わせるような木造の町並みが目に飛び込み、思わず声を上げた。どの家も情緒があるが、中でも恵那市指定文化財の勝川家、木村邸、土佐屋は無料で屋内を見学でき、江戸時代の商家の様子を隅々までうかがい知ることができる。

町はずれから、岩村城跡へ向かう道が続く。同城は日本百名城のひとつに選定され、かつては山中に大規模な城郭があった。麓の太鼓櫓からヒノキが生い茂る急坂を登っていくと、あちこちに遺構が見られる。山頂には見事な六段壁の石垣が現れ、往時の威容を垣間見ることができる。
ここではさまざまな時代の町並みや山城が堪能できる。歴史を今に伝える町がいろいろあることを知った旅だった。
(森山広之)
(2018年5月19日掲載)
上=岩村城がある城山を背に、江戸時代から残る町並みが続く
左=岩村城本丸近くにある六段壁。崩落を防ぐために補強され、この形になった