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74 鴨ケ嶽 ~キンラン見て北信五岳一望 

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 好天に恵まれた5月中旬の平日、自然観察グループの仲間と中野市の鴨ケ嶽(688メートル)に登った。同市では「市民の山」として親しまれており、この時季は希少種のキンランの花が見られることで人気がある。

 信濃吉田8時11分発の長野電鉄の電車に乗り、信州中野で下車。駅前で待っていてくれた仲間の車2台に分乗し、東山山麓の日本土人形資料館へ。

 資料館近くの東山公園駐車場に車を止め、動物よけ柵の扉を開けて9時20分に登り始める。背の高いナラの木が立ち並び、足元は丸太の階段が整備されている。日陰の草地に咲く青いホタルカズラや朱色のヤマツツジの花がきれいだ。

 しばらく登り七面山に。あずまやで休憩した後、再び丸太階段を登っていくと、仲間がギンランを見つけた。背丈は10センチほどで、縦長の白い花を付けている。これも野生ランの一種で、数が少なくなっているようだ。

 稜線に出て右に折れると、深い空堀が現れる。ここは戦国時代、麓に国史跡の館跡がある高梨氏の要害として利用された山城だ。

 空堀を下って上り詰めると、山頂部だ。その一角にキンランがあった。高さ30センチほどの8本の茎がひとかたまりとなり、上部に美しい黄色の花を咲かせている。

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 周囲を見回しても、キンランがあるのはこの場所だけだ。毎年今ごろ、2週間ほど咲くという。環境省のレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類。ほかの山ではめったに見られないだけに、この花を見るために鴨ケ嶽を訪れる人も少なくないという。

 写真を撮った後、山頂のベンチで大休止。大きく開けた西側からは、眼下に中野の市街地を望み、正面に斑尾山、妙高山、黒姫山、戸隠連峰・高妻山、飯縄山の北信五岳を絶妙の配置で一望することができる。

 ここで、2月7日に17年かけて鴨ケ嶽登頂1万回を達成した地元の中村幸次さん(78)に出会った。毎月50回を目標に登り続け、この日は2回目という。

 中村さんの話を聞き、1時間ほど頂上にいて、同じ道を下る。途中の展望台に立ち寄る。ここからは北信五岳がさらに近くなり、山頂に勝る眺めだ。

 さらに下って、箱山峠からの登山道と合流する付近で左へ折れ、シダ類の多い谷底の道を下る。墓地の手前で再度、動物よけの金網の柵を開け、懸崖造りの観音堂がある如法寺の境内に出る。

 参道をまっすぐ下って駐車場へ。帰路、公園に整備された高梨氏館跡に立ち寄り、遺構を見学した。東側に、いま登ってきた鴨ケ嶽と、その隣の箱山が緑に覆われていた。
(2018年5月26日掲載)

=山頂部に咲く希少種のキンラン

 
中高年の山ある記