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2018年夏01 シラネアオイ ~多雪地帯にひっそりと

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 薄い紫、淡いブルー...。形容が難しい微妙な色、直径約5~10センチの大輪の花を付けたシラネアオイ。本州中部以北の日本海側の多雪地帯に生育する日本固有の植物だ。かつての分類はキンポウゲ科だったが、「科として独立する見解が世界的に定着」(長野県植物誌)し、一科一属一種とされる。

 県内では北部の山岳地帯で、雪解けを待つように標高を上げて、順に花が咲いていくので、花期は長い。

 5月下旬、奥信濃の多雪地帯の樹林に分け入った。雪の重みで根元部分が斜面下方に湾曲しながら空に向かって伸びる雪国特有の樹林の中を進むと、登山道沿いに大輪が咲いていた。徐々に株は増え、10株ほどの小群落から、最後は目の行き届く範囲で数えると、100株ほどの大群落に突き当たった。

 見栄えがすることから山野草愛好家に人気だ。県版レッドリストで絶滅危惧Ⅱ類にランクされ、県希少野生植物に指定されている。

 「昔から盗掘が後を絶たず、このままでは絶えてしまう」。斑尾高原(飯山市)の山田輝男さん(73)は、ペンションオーナーらに呼び掛けて、10年ほど前から保護回復に乗り出した。高原内の自生地に保護を訴える看板を立て、増殖にも取り組んだ。秋に採取した種を春先に発芽させ、3年がかりで育てた数百株を、自生する群生地の間に補植してきた。

 花が咲くには6年かかるというシラネアオイは、昨シーズンあたりから実を結んで開花し、にぎやかになった。地元観光協会などと協力し、自生地のトレッキングルートを「シラネアオイの小径」と名付けて誘客。多くの人たちに見てもらいながら、盗掘防止の監視にも一役買ってもらっている。

(2018年6月16日掲載)

写真=木漏れ日を浴びて、淡い色彩の大輪を咲かせるシラネアオイ=奥信濃で5月下旬撮影
 
北信濃の動植物