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2018年夏02 フクロウ ~子育てに最適な社叢で

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 1998年長野冬季五輪のマスコット「スノーレッツ」でおなじみになったフクロウ。須坂市街地にある神社では、30年以上も前からフクロウが繁殖を繰り返している。今年も、5月に親が姿を見せて子育て。月末に1番目、6月初めに2番目のひなが巣立った。

 この時季、神社を囲む住民たちはフクロウの話題で盛り上がる。「夕暮れ時、親が騒ぐので見たらヒナが道路に飛び出していた」と主婦。観察を続けている男性(74)は、高い樹木を見上げて姿を探す。ひなが高い場所に移動するまで心配が続いたが、6月8日早朝にはケヤキの高い枝の先端と本殿を囲む塀の内側に2羽のひな、隣り合うイチョウの木の高い場所からひなを見守る親が確認できた。

 境内には、樹齢300年以上とみられるケヤキの大木が20本余。フクロウが毎年決まって繁殖するケヤキは境内の隅で、頻繁に車が通る県道と市道の交差点にある。うろも高さは10メートルほどと低め。子育てには「うるさくて、危険ではないか」と思うような場所だ。

 男性によると、餌は主にムクドリだという。うっそうと茂る社叢(しゃそう)には、さまざまな野鳥が集まり、小さなうろや社殿屋根の瓦の隙間で繁殖する小鳥も。フクロウは遠出しなくても、近くで餌にありつけたのではないか。ここは、産卵、子育てのうろ、身を隠す林、餌と、環境が整う。

 一方で、すみかを見つけられないフクロウも。長野市の戸隠森林植物園は、一見豊かに見える森林環境の割にはフクロウが子育てできる大きなうろが少ない。「八十二森のまなびや」は6年前、園内の野ネズミ退治を目的に巣箱を3カ所に設置。3年目から営巣を始め、今年も5月下旬にひなが元気に巣立った。

(2018年6月23日掲載)

写真=神社本殿を囲む塀の内側でひっそりと身を隠すフクロウのひな=須坂市で6月8日撮影
 
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