
長野市街地の主要道路の植え込みや道路脇、民家の庭先などでオレンジ色の花が、4月初めごろから目に付く。ポピーの名称で親しまれるケシ科の一年草で、「ナガミ」の和名は長い実から付けられた。
地中海沿岸原産の外来種。輸入の飼料や穀物などに交じって持ち込まれた。1961年に東京で見つかったのが最初とされ、80年代には関東から関西、四国、九州へ。今では、北海道、東北、沖縄を除く全国に分布を拡大している。
県内で目立ち始めたのは10年ほど前から。長野市内では、一部で駆除された場所があるものの、同市石渡の畑の脇や吉田の運動公園通りの植え込みは、毎年同じように花を咲かせている。
旺盛な繁殖力が際立つ。高さ50~60センチほどの茎先端に長さ2センチほどの実が付き、中には平均で約1600個とされる種がびっしり。花期は5月でほぼ終わり、実が完熟すると、上のふたがポコッと持ち上がり、隙間から種が排出しやすくなる仕組みだ。ちょうど梅雨時と重なり、雨水などに交じった膨大な数の種が、車のタイヤなどに付着して運ばれ、拡散される。
種は、けし粒大と小さく、コンクリートの隙間でも発芽、栄養分がないせいか、花も小ぶりだ。花壇などに侵入すると、肥料もたっぷり、パンジーやビオラに負けじと、背丈も花も大きい。「きれいだから」と、庭先の花壇で育てていると思われる光景や、一面をオレンジ色が覆い尽くした畑も見かける。
麻薬成分はないが、毒性を持ち、葉などから出る汁に触れると、かぶれることもあるという。国の外来生物法による駆除や注意を促す指定種にはなっていないが、人知れずじわじわと増え続けている。
公園の一角に初めてできたナガミヒナゲシの群落。撮影は5月17日だが、27日の区の一斉清掃できれいに抜き取られた=長野市石渡
(2018年6月2日掲載)