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126ドゥカーレ宮殿 ~最高権力者の館に傑作数々

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 水上バスでイタリア・ベネチアのサンマルコ広場に降り立つと、右手に巨大な白亜のゴシック様式の建物「ドゥカーレ宮殿」が目に飛び込んでくる。かつてのベネチア共和国の最高権力者、ドージェ(元首)が代々住んだ館だ。立法、行政、司法の三権が凝縮された権力の中枢。共和国の権力と栄光、そして影をも見てきた。

 9世紀に創建され、火事などによって14~15世紀にかけて再建された。1階にある丸い柱廊と、透かし模様のアーチがある2階はレース編みのようだ。

 正面奥に、名所の一つ「巨人の階段」がある。登りきった左右に立つ巨人は「March」(3月)の語源である軍神マルスと、海の神ネプチューンを意味するネプトラヌスの像。サンソヴィーノの傑作である。ここの踊り場で新任のドージェの就任式が行われた。サンソヴィーノは、近くの柱廊にある「黄金の階段」も設計した。

 館内の見どころは3階だ。「謁見控えの間」は、外国の大使が元首に会うまでの間、待たされる場所。自らの富と権力を見せ付けるために、地元の芸術家を総動員した傑作をそろえている。

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 ベネチア派三大巨匠の一人ティントレットの板絵4枚は、神話からの連作である。また、パリのルーブル美術館にある最大の絵画「カナの婚宴」を描いたベロネーゼの「エウロペの略奪」が飾られている。

 元首との謁見でも圧倒されただろう。壇上にある元首の座からは、天井の11枚の絵をぐるりと見渡せる。これもベロネーゼと弟子の作品だ。ベネチア共和国を統治した「十人委員会の間」にも、金箔の天井画をはじめとする力作があり、目を見張る。

 別の意味で面白いのは、宮殿と運河を挟んで対岸にあった監獄を結ぶ小橋である。宮殿内の裁判所で有罪判決を受けた受刑者は、隣の監獄へ小橋を渡っていく。島の外界を見る最後の機会になるので、受刑者が小橋の窓から見てため息をついたことから、この橋は「ため息橋」として知られる。隠れた名所でもある。
(2018年6月23日掲載)

写真上=美しい柱が並ぶドゥカーレ宮殿
下=「ため息橋」から外の眺め
 
ヨーロッパ美の旅