127 経皮的止血術 ~カテーテル技術応用 急いで止血する手段

0602katetel.jpg
 放射線診断医は、カテーテルという直径数ミリの細い管を使い、体のさまざまな部位の血管を撮影したり、治療をしたりしています。「経皮的止血術」はこの技術を応用したもので、主に体の深部の動脈からの出血に対して、血管内に入れたカテーテルを使って内側から出血を止める治療です。

 急いで出血を止めなければならない状況には、外傷などによる血管や内臓の損傷、臓器の炎症や血管奇形、腫瘍からの出血などがあります。止血の方法もさまざまで、部位や原因、状況に応じた方法を選びます。経皮的止血術はその手段の一つです。一般に、手術ができない場合や手術と同じ止血効果が期待できる場合に行います。

塞栓物質を詰める
 経皮的止血術の目標は、出血している部分の血流を物理的に止める、あるいは体が本来持っている止血の働きを補助することです。

 具体的な方法としては、血管に塞栓(そくせん)物質を詰めて出血箇所をふさぐ「血管塞栓術」と、膜の付いたステント(筒)を穴の開いた血管の場所に置いて穴をふさぐ「ステント留置術」があります。経皮的止血術のほとんどが、「血管塞栓術」で行われています。

 カテーテルは、脚の付け根などの血管から挿入します。カテーテルの先を出血している血管の場所まで送り込み、血管内に塞栓物質を入れて止血します。

 使う塞栓物質にはさまざまな種類があります。カテーテルを出血した血管まで届けることができた場合には、カテーテルの位置にある血管だけをふさぐものを使い、出血部分より手前でふさぐ場合は、いくつかの塞栓物質を使い分けて出血部の血流が遅くなるように工夫します。
 
迅速に判断する必要
 血管は人によって枝分かれの仕方が違っています。また、詰めてよい血管と詰めてはいけない血管があります。経皮的止血術をする場合は、出血点を見極め、適切な塞栓方法を迅速に判断する必要があります。

 私たち放射線診断医は、こうした治療の経験を積み、技術を向上させるととともに、常に使う器具や塞栓物質に関する情報収集に努めて、安全で正確な治療ができるように備えています。

 今井 迅=放射線診断科部長=専門は画像診断、インターベンショナル・ラジオロジー
 
知っておきたい医療の知識