
5月中旬の土曜日に2週にわたり、新潟県上越市と妙高市境の青田南葉山(949メートル)に登った。1週目はカルチャーセンター「里山講座」の下見で、まずまずの天気。2週目の講座本番は終日、雨だった。
両市で「市民の山」として親しまれている南葉山は、麓の地名を採って北から青田南葉山、籠町南葉山、猪野南葉山と3つのピークが並んでいる。
妙高山にかけて一帯の山々は冬、日本海からの湿った風が吹きつけ、大量の雪が降る。春になっても残雪が多く、雪解けとともに多くの花々が咲くのが魅力だ。
下見の日は8時に長野市内を出発。上信越道を上越高田インターで出て、南葉高原キャンプ場へ向かう。沿道にはタニウツギの濃いピンクの花が咲き乱れ、ホウの木に白い花が目立つ。
キャンプ場に車を置き、9時40分に木落とし坂コースを歩き始める。正面に望む青田南葉山には、まだ沢筋に雪が見える。間もなく、淡い紫色の優美なシラネアオイの花が現れる。新潟の「県の木」ユキツバキの赤い花や、真っ白なタムシバの花も見られカラフルだ。
頭上に若葉が覆いかぶさる緑のトンネルのような山道を歩いていくと、道端にカタクリの群落が続く。信州ではとっくに花が終わっているのに、ここではまだ赤紫の花を付けていた。
だが、1週間後に訪れた時には花はなく、実に変わっていた。ショウジョウバカマも枯れた花が目立ち、替わって薄ピンクのイワカガミの花が多くなる。小さなチゴユリの花も見られるなど、季節の移ろいの速さに驚かされた。
登山道は「木落とし坂」の名の通り、斜度を増す。中腹に唯一の水場があり、冷たい湧き水でのどを潤す。下見の際は、ここから広々とした頚城平野を一望。さらに上部の展望広場からは、日本海や米山、越後三山(八海山、越後駒ケ岳、中ノ岳)も見渡せた。
広場を過ぎると雪渓が現れ、8合目から上部は一面の雪となる。登山道は雪で隠れ、木に取り付けられたピンクのリボンや踏み跡をたどりながら進む。
新緑が美しいブナの根元には、ぽっかりと雪の穴が開いている。雪解けが進むにつれ、埋もれていた低木類が音を立てて跳ね上がり、歩きづらい。
山頂には、南葉山神社の小さな祠と石に囲まれた標識があり、一部は地肌をさらしていた。南に妙高山、北に日本海を望めたのは、有雪期の今ならではの景色のようだ。
下りは明神沢コースを歩く予定だったが、雪が深くルートが見つからなかったため、木落とし坂コースを引き返すことに。雨にたたられた本番時は、粘土質の急坂が滑り、転ぶ人が何人かいた。
帰路、妙高高原の池の平で温泉に入り、冷えた体を温めた。
(横前公行)
(2018年6月2日掲載)
写真上=雪に覆われた青田南葉山の山頂
下右=カタクリ、同左=シラネアオイ