
飯山市戸狩で6月10日、オオルリシジミの「親子観察会」が開かれた。梅雨空の下、県版レッドリストで絶滅危惧ⅠB類、県の指定希少野生動物である「るり色の宝石」オオルリシジミの飛翔や産卵する光景を、地元や長野市、東京などから集まった20人ほどが楽しんだ。
オオルリシジミはかつて、幼虫が食べるクララが里山の田んぼや畑のあぜで普通に見られ、どこでも見られるチョウだった。うじ殺しの殺虫剤としての役目がなくなったクララの消滅や農薬散布などによって激減した。
現在、国内の生息地は長野県内3カ所と九州阿蘇山系だけになってしまった。その一つの飯山市は、いったんは途絶えたと思われていたが、2004年に偶然発見された。乱獲が主な要因で絶滅した前例から、保護対策などの態勢を整えた7年後に公表された。
同時に、市は天然記念物指定に動くとともに、研究者や市民らに呼び掛け、「北信濃の里山を保全活用する会」を立ち上げた。具体的な活動が始まり、クララ維持のための草刈りや低木の伐採など、生息地の環境整備、違法採取対策の看板やロープ設置、監視活動が行われてきている。
だが、地道な活動の裏でオオルリシジミは減り続けた。危機感を抱いた同会は13年、環境が似た戸狩地区で同系の種を維持したさなぎを試験的に放ち、絶滅という最悪の事態を回避する手段に踏み切った。毎年、ほぼ同数の個体が順調に羽化し、ほそぼそと命をつむいでいる。
一方で、元の生息地はここ数年極限状態が続き、回復の兆しは見られない。これまでの活動に加え、火入れやクララの根元の整備など、絶滅回避への懸命な試行錯誤が重ねられている。
(2018年7月7日掲載)
写真=食草クララの花穂で、3、4㌢ほどのるり色の羽を広げるオオルリシジミの雌=飯山市で6月10日撮影