
小さな花、春のイメージのスミレだが、背丈が高く、花も大きいオオバタチツボスミレは初夏、北信の高層湿原に咲く。スミレ科の多年草で高さは約30センチ。和名の由来「オオバ」のとおり、葉も3~7センチと大きい。国内では中部地方以北の深山の湿原や湿った草地、北海道に分布し、県内のこの場所が南限とされる。県版レッドリストで絶滅危惧IA類にランクの希少種だ。
標高約1500メートルの湿原に、10年ぶりに足を運んだ。一面に点在する白いワタスゲや小さなタテヤマリンドウ、コバイケイソウなどが出迎え。木道を進むと、以前撮影した同じ場所で、花は最盛期だった。
水気たっぷりの環境を好むのか、水がちょろちょろと流れる場所にだけ、群落を形成。すっくと伸びた花柄の先端に垂れ下がるように1輪の花を付け、数輪が固まると、見応えがある。撮影には、木道からの距離も高さもほどよい。
花の色はほかの植物の陰や日当たりの影響か、濃さが微妙に違うが、以前撮影した「薄紫色」より、今回は「薄いブルー」といった青のイメージが強い。
湿原を含めた高原一帯を管理する総合案内所の池田敦夫さん(56)は「この10年間、増えもせず減りもせず」。ただ、高原一帯の乾燥化は進んだままという。
20年くらい前までは、前線が近付くと、必ず霧が巻き、いつでもしっとりとした感じだった。その後は朝から晴れの日が多く、霧の日が少なくなった。匂いも何となく乾燥したほこりっぽい匂いに変わった。湿った環境が好きなオオバタチツボスミレの先行きが少し心配になった。
写真=花も葉も大きく、見応えのあるオオバタチツボスミレ=北信の高層湿原で6月23日撮影
(2018年7月21日掲載)