
現代の日本では、脂肪が多い欧米型の食生活が定着しています。これにより生活習慣病が増えているとして、脂肪が悪者にされる傾向があります。
確かに、脂肪はカロリーが高く、取り過ぎてしまうと、肥満や生活習慣病の原因となります。一方で、肌や髪の健康、脳や神経の機能を保つために必要な栄養素でもあります。
特性は種類・割合で
脂肪と油脂は同じことを意味し、常温で固まらない油(あぶら)と固まる脂(あぶら)に分けられます。「あぶら」を正しく選んでバランスよく取ることは、さまざまな疾患の予防や改善に寄与することが分かってきています。
「あぶら」の特性は、その成分である「脂肪酸」の種類や割合によって変わります。脂肪酸を、炭素同士の結合方法によって分類すると、▽飽和脂肪酸▽不飽和脂肪酸(さらにn―9系、n―6系、n―3系に分類)▽トランス脂肪酸―に分けられます。
外食をすると、揚げ油や炒め油に多く含まれるn―6系脂肪酸のリノール酸やトランス脂肪酸を取り過ぎる傾向があります。
リノール酸の取り過ぎは、アレルギーや高血圧、動脈硬化を招くことが分かってきています。また、菓子やパンに使われるマーガリンやショートニングにはトランス脂肪酸が多く含まれており、過剰摂取は心疾患のリスクを高めます。
一方、外食で不足しがちなのは、魚の脂分に多いドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)、ごま油やアマニ油に多いα―リノレン酸などのn―3系脂肪酸です。これらにはLDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪を減少させ、HDL(善玉)コレステロールを増加させる作用があります。
不足しがちは補う
「あぶら」をバランスよく取るために、取り過ぎる傾向のあるものを減らし、不足しがちなものを補うメニューを選びましょう。
外食では、リノール酸やトランス脂肪酸を多く含むフライを控え、n―3系脂肪酸が多いサバやサンマの焼き魚かマグロの刺し身にする。デザートのケーキを我慢すれば、トランス脂肪酸をさらに減らせます。自宅で魚や豆腐を使った料理をメインにする、揚げ物や炒め物を減らして焼き物や蒸し料理を増やすのもいいでしょう。
過剰摂取を控えた方がよい「あぶら」と、健康のために取るべき「あぶら」を意識し、取り方を工夫してみましょう。
(2018年7月28日掲載)
小池 泰子=栄養科主査=管理栄養士