
裾花川上流の鬼無里地区。6月中旬の早朝、最奥の奥裾花自然園へモリアオガエルの撮影で車を走らせると、道路沿いにニホンザルの群れが現れた。素早く逃げる子猿、平気で道路を横断する親猿。こちらの動向をうかがいながら桑の実を食べる若い猿もいる。
長野市内の猿出没や被害は、西部の鬼無里、戸隠一帯と東部の若穂や松代だが、「鬼無里が最も多い」と鬼無里支所地域きらめき隊の羽田稔支所長補佐。頻度が高いのは鬼女紅葉伝説に由来する東京、西京、土倉、田之頭、七ツ室などの「両京地区」一帯と、大望峠方面の財又から品沢にかけての「上里地区」一帯の2カ所という。
群れの数は不明だが、住民たちの目撃は2匹から10~20匹。2004年ころから被害が目立つようになり、3年後には個体数調整の駆除を開始。毎年、捕獲許可頭数を申請し、30匹程度で推移してきたが、被害が多く追加で実施した14年は46匹にも上った。
被害の農作物はジャガイモやトウモロコシ、カボチャなど。住民らは市や地区から補助を受け電気柵を設置したり、ネットを張ったりして自衛。ここ3年ほどの被害額は220万円前後で横ばいだが、鬼無里地区が市全体の約半分に及ぶ。
山あいに寄り添うように点在する集落はどこも人口減と高齢化。手入れが行き届かない緩衝帯や増える耕作放棄地が、猿の活動範囲を集落まで広げてしまったようだ。
支所は、おりによる捕獲のほか、要望があればロケット花火を配り、追い払い作戦を指導している。しかし、「被害の増加が耕作放棄を助長し、悪循環に陥っている」と指摘。山の手入れの仕組みや森林資源活用、空き家活用による定住促進など、住民とともに総合的な対策が喫緊の課題としている。
(2018年8月18日掲載)
写真=奥裾花へ向かう途中、土倉集落の道路沿いに現れ、桑の実を食べるニホンザル