糸魚川を訪れた。しなの鉄道とえちごトキめき鉄道を乗り継ぐこと2時間半。北陸新幹線ならたったの35分だが、山と海を眺めながらのんびり旅もいい。
同地に来たら「フォッサマグナミュージアム」はぜひ訪れたい場所だ。ラテン語で「大きな溝」を意味するフォッサマグナは、西は糸魚川から静岡、東は柏崎から千葉へと続く断層に挟まれた大地の「溝」で、かつては日本を東西に分けていた海だった。その後、火山活動や堆積で数百万年ほど前に東西がつながったが、北信地方がほぼすっぽりと埋まることから、長野の太古の歴史を学ぶことにもなる。
糸魚川駅からバスに乗り10分。小高い山の上の博物館へ。館内に入ると、同地で産出した多種多様のヒスイが展示され、フォッサマグナ形成の経緯などが学べる。中でもフォッサマグナを発見し、名付け親となったドイツの地質学者、エドムント・ナウマンの業績の展示は興味を引いた。ほかにも世界の珍しい鉱物や化石が展示され、見ていて飽きない。

気づいたら帰りのバスを逃してしまったので、駅まで歩いた。糸魚川の町と海を眼下に眺めながら、蛇行する穏やかな雰囲気の道。糸魚川と松本を結ぶ旧千国街道だと、後で知った。
途中で山沿いの道へ入ると、アップダウンと急曲線の道に家並みが続く。きっと古い町だろう。町名を見ると「一の宮」とある。神社を中心に造られた町だったのだろうか。
裏道を抜けると、市役所に着いた。駅周辺より1段高いこの付近は、かつて同地を治めた清崎城があった。隣にはかやぶき屋根が立派な天津神社と、奴奈川神社がある。
駅を横切り、旧加賀街道(北国街道)糸魚川宿の名残がある中心街へ。2016年12月の大火で多くの家が焼けてしまった。現在は再建された家もあるが、まだ空き地があちこちにあり、胸が痛む。
街道を東へ進むと雁木造りの家が連なり、海側にかけて道が少し上り坂になっている。砂丘の上にできた町の特徴だ。千国街道との分岐点をぐるっと回り、駅に戻った。

実は訪れた日(8月2日)が、ここから3キロ南の根知にある「フォッサマグナ・パーク」のリニューアルオープンで、改修工事により断層がはっきり見られるようになったという。列車やバスの接続が悪く、行けなかったのが残念だ。東には親不知子不知、南にはヒスイ峡など見どころがたくさんあるが、公共交通機関のみでは回り切れなかった。別の機会に訪れたい。
(森山広之)
(2018年8月18日掲載)
写真上=雁木の街並みが続く糸魚川宿。大火で被災した区域の再建は道半ばだ
下=フォッサマグナミュージアム