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2018年秋02 ニホンウサギコウモリ ~木に洞穴なく 建物がすみか

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 ヒナコウモリ科で頭胴長約4~6センチと小さく、大きな耳があることから和名「ニホンウサギコウモリ」がある。本州では中部以北、紀伊半島、四国の一部に分布、中山間地から亜高山帯に生息。夜行性で、夕暮れとともに小昆虫などを捕食。昼間は木の洞穴や天井裏など暗い所で休む。

 10年前に撮影した北信地方の標高1400メートルの高原のキャンプ場奥にある廃トイレを再訪すると、いた。たったの2匹。「最初に見つけた2003年には20~30匹がずらりと並び、壮観だった」と、高原の案内所管理人の池田淳夫さん(56)。徐々に数が減り、ここ10年ほどは数匹で推移し、ゼロだった年もある。

 池田さんは高原で仕事をするようになってから31年。「9、10月に、よくコウモリに遭遇した」という。01年9月にはコテングコウモリ、ヒメホウヒゲコウモリを、案内所併設のトイレで発見。05年と15年の10月下旬、冬季閉鎖のため案内所をぐるりと囲う板の中からヒナコウモリが出てきた。

 05年、案内所のトイレで水洗用の水を流すと、壁の向こうからごそごそと怪しい音がする。にぎやかな音や鳴き声から、複数のヒナコウモリではないかと推測。約10年でいなくなったが、季節的にも、木製の外壁との隙間で繁殖を繰り返していたとみられる。

 一帯は樹齢を重ねたブナやミズナラなど、林は豊富だが、コウモリがすみかにできるような洞がある大木はない。県は15年改訂のレッドリストで、数が減少との理由でランクをⅡ類に上げた。

 取材の帰り、「それでも」と思い、キャンプ場の倉庫をのぞくと、6匹が確認できた。計8匹に会え、したたかに命を紡いでいる姿にほっとした。
(2018年9月29日掲載)


写真=耳がウサギのように大きいニホンウサギコウモリ。中央の個体は耳を閉じているか別種か不明=北信の高原で9月6日撮影
 
北信濃の動植物