
秋の風に揺れて、フジバカマのほのかな甘い香りが漂う。長野市の犀川第一緑地にあるマレットゴルフ場のコース脇。人の背丈ほどの群落の花は満開で、蜜を求めてさまざまなチョウやハチでにぎやかだ。
際立つのは、チョウの渡りで知られるアサギマダラだ。タテハチョウ科で羽を広げると10センチほど。まだら模様の羽の白っぽい部分があさぎ色であるため、その名がある。春先に南方から北上、夏にかけて県内をはじめ各地で繁殖する。
成虫は冷涼な山地で過ごすとされ、私も美ケ原や菅平、カヤの平など標高の高い高原でよく見かけた。寒冷地では越冬できず、秋になると南方へ移動。紀伊半島など太平洋岸の暖地、中には遠く海を越えた南西諸島や台湾まで南下し冬を過ごす。
遠距離を旅するチョウを立ち寄らせよう―と、蜜源のフジバカマを植える試みが盛んだ。同マレットゴルフ場では、地元の安茂里マレットゴルフ友の会が2016年6月、結成15周年記念事業として、七二会地区から譲り受けた約200株を植えた。
草丈約数十センチだった株は、秋には花を咲かせ、早速アサギマダラが飛来。「数十匹とにぎやかでうれしかった」と、当時友の会会長の南雲常良さん(81)=宮沖。今季も9月18日に初飛来した。当初は台風や長雨で飛来数は伸び悩んだが、その後、回復し、少なめだった昨季を上回ったという。
県内ではこのほか、11年から南信の宮田村、長野市七二会地区で休耕地に、新たに今春、浅川ダム上流や小川村の歴史的砂防施設「薬師沢石張水路工」に地元自治体などが植栽した。チョウの観察や立ち寄った記録を羽に書き込む「マーキング」や写真撮影をする人たちでにぎわっている。
(2018年10月13日掲載)
写真=蜜を求めてフジバカマの花の間を飛翔するアサギマダラ=長野市犀川第一緑地のマレットゴルフ場で9月22日撮影