
その名の通り、キノコに依存する甲虫で、体長は16~36ミリとオオキノコムシ科の仲間の中で最大。オオキノコムシは、光沢のある甲と背中に黒い斑点が入った美しいオレンジ色が特徴で、ブナやミズナラなどが育つ山地の林に生息する。サルノコシカケや木材に含まれる菌類を食べて生活する。
日本固有種で、分布域は北海道から九州までと広いものの、数は少ない。県内では、1989年以前に飯田市や旧長谷村、松本市、旧安曇村などで記録が残るが、以降は栄村と木祖村でしか確認されず、県版レッドデータブックで準絶滅危惧種にランクされている。
森林環境が良好かどうかを判断する指標動物とされる。信州甲虫研究会会長の平沢伴明さん(61)=安曇野市=は「最近は県北部の豪雪地帯に残るブナ林でないと見られない」。開発や地球温暖化に加えて、近年はシカ食害による林床の乾燥化などで、森林が変化して減少傾向が続いていると指摘する。
私が最初に出会ったのは2007年夏、標高約1400メートルの北信の高原。「コンスタントに確認できていたのに、今シーズンは1回も見ていない」と高原を管理する総合案内所の池田淳夫さん(56)。自力でブナ林に生えるサルノコシカケを中心に探したが、見つからなかった。
偶然に3匹を見つけて撮影できたのは、千曲川を挟んだ全く別の場所。見掛けたのは日中だ。平沢さんは、斑紋はテントウムシの擬態を連想させ、昼間に活動することも多いという。ただ、かつては夜に立ち枯れしたブナ林内で個体を見掛けた経験があり、「本来は夜行性ではないか」。最近、夜間でないとなかなか姿を現さないのは、絶対数が減っているためとみている。
(2018年10月20日掲載)
写真=立ち枯れたブナの木に点在する黒いキノコの中にいたオオキノコムシ=北信の里山近くのブナ林で9月19日撮影