
長野市郊外の里山や東方の高原で、センブリやムラサキセンブリがかれんな花を咲かせている。いずれもリンドウ科センブリ属の仲間だ。古来、胃薬として利用され、成分の苦味が「千回振り出しても変わらず苦い」と、その名がある。
高さ数センチから25センチほど。一茎から枝分かれし、長さ約1・5センチの小花をたくさん付ける。日当たりの良い林縁や草原の脇など生育条件が限られ、自生地の自然遷移などから減少。分布が県東部に集中するムラサキセンブリは県版レッドリストで絶滅危惧Ⅱ類。センブリは全県に分布するものの、数が減り、2014年の改定で準絶滅危惧種となった希少種だ。
ムラサキセンブリは善光寺盆地東方の高原の草原に生育。09年秋、スキーゲレンデで偶然見つけた。「そのころから自生地情報が入るようになった」と、案内してくれた地元の自然研究会会員、木村輝佳さん(70)。3、4カ所の群生地があり、中には約1000本に達する場所もあったという。
14年ごろから徐々に勢いが衰えた。木村さんによると、背丈の高い草地には生育できず、低い草地がまばらな日当たりのいい場所が適地。自力で発芽から光合成、開花、種散布に至るには難しい植物と分かった。

一方、センブリの自生地は長野市街地北の里山一帯、山頂付近の日当たりのよい岩場や草地脇。市霊園では「1987年ごろの第2次造成時からあった」と徳永昭行所長(64)。いずれも高さが10センチに満たない株が多く、除草時期の検討などで保護に努めたいという。
(2018年10月27日掲載)
写真上=1株に50個近い花を咲かせるムラサキセンブリ=写真上=東信の高原で10月3日撮影
写真下=高さ約20㌢の株が枝分かれし複数の白花を付けたセンブリ=同下=長野市郊外の里山で10月1日撮影