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2018年秋03 ヒメカイウ~高地にひっそりと白い花

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 信越トレイルの新潟県境一帯に生育するヒメカイウ(姫海芋)。あまり見聞きすることのない植物だが、サトイモ科で別名ミズザゼンと呼ばれる多年草だ。国内では中部地方以北と北海道の山地から亜高山の池や沼に自生。水面を根茎が縦横に走り、高さ20~30センチの葉柄を伸ばす。葉はハート形で、夏にミズバショウの苞(ほう)に似た白い花を付ける。

 県内の自生地はこの場所を含む北信の3カ所ほどに限られ、県版レッドリストで絶滅危惧IB類、県の希少野生植物指定の希少種だ。

 県境の峠近くの自生地は2カ所。1カ所は沼や池というより湿原の様相で、ほかの植物と生育場所を競っているように見える。もう一つは、散策道から距離はわずかだが、たどる道はなく、ブナやシラカバ、低木などにぐるりと囲まれた約20メートル四方のくぼ地。たっぷりたまった水面一面がヒメカイウに覆われている。

 ほぼ一種が優占した不思議な光景だが、1980年に初めて見た飯山市の植物研究家高橋勧さん(89)は「寒さで葉が小さいミズバショウではないか」。4年後、県植物研究会の調査でヒメカイウと判定。県内の自生地では3カ所目で最大級と確認された。

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 2008年、飯山市の子ども向け自然観察会に同行、引率した元教諭の故上原脩さんに「底なしだから気をつけて」と言われながら案内してもらった。その後、たびたび足を運ぶが、生息状況はほとんど変わらない感じだ。
(2018年10月6日掲載)


写真=夏の間、青々と茂った葉も黄葉し倒伏(写真上)、間には赤く熟した実が点在(同下)=いずれも新潟県境で9月16日撮影
 
北信濃の動植物