記事カテゴリ:

21 大鬼瓦の犬小屋 ~報道で大きな話題に 長野の瓦文化伝わる

1006ayumi01.jpg
 2010年に始まった善光寺大勧進萬善堂(本堂)の改修工事の際に譲り受けた大鬼瓦は、重さもかなりのものでした。

 鬼瓦だけで1トンあり、周りの瓦も500キログラムなるので、3寸(約9センチ)角の材木を土台、柱、垂木などの主材に使って、私の店に復活させました。実物の屋根らしく見えるように化粧材も使い、実際に使われたのと同じ紋が入った本葺き瓦を使って仕上げました。

 コンクリートブロックを基礎代わりにして据え付け、転倒防止のため倉庫の壁際に建て、中の鉄骨と針金で結合しました。ただ、そこにいた2匹の犬を追い出して据え付けることもあり、工事当初は、犬の住居探しに悩みました。

志村けんさんも来訪

 けれども、架台の下部に2匹分のスペースが確保できると分かりました。天井と床を張ると、棟割り長屋ならぬ、妻入り(建物の端に玄関がある長屋)の鬼割り長屋になりました。その結果、多くの人の目にふれることになったのです。

 13年3月に組み立てが終わると、5日後には新聞社が取材に訪れ、信濃毎日新聞や長野市民新聞に掲載されました。屋根の業界紙にも取り上げられました。テレビでも「ナニコレ珍百景」(テレビ朝日)で放送され、「天才!志村どうぶつ園」(日本テレビ)では、MCの志村けんさんが突然来訪され、驚きました。今でもはっきりと覚えています。

 その後も10社近くの新聞、テレビの取材を受けました。犬小屋が話題の中心でしたが、「見たよ」という多くの言葉をいただき、歴史が浅い長野の瓦文化の一端にふれてもらったようで、感激しました。さらに、うれしいことに、宇都宮市にいた長野工業高校時代の同級生から「テレビで見た」と電話がありました。思いもかけず、55年ぶりの同級会のようになり、話が弾みました。

 話題になるこの大きな鬼瓦よりも前に譲り受けたのが、自宅の玄関に飾ってあります。客間の屋根の瓦葺き替え工事をしていた渋温泉(下高井郡山ノ内町)の金具屋さんから2001年にいただいたものです。保管していたプレハブ小屋が雪でつぶれそうなので処分したいと、出された鬼瓦です。

  葺き替えでの提案

 この瓦は鈴木宗太郎さん(元長野青年会議所理事長)が所有していた土蔵の屋根に使われていたことを耳にしていたので、考える間もなく引き取らせてもらいました。

 1991年に長野冬季五輪開催が決まり、問御所町に表彰式会場(セントラルスクゥエア)が建設されることになり、そこに居を構えていらしたのが鈴木さんでした。立派な土蔵が2棟あり、私も瓦工事で出入りしていて見覚えがあったので、思わず「欲しい」という衝動にかられたのかもしれません。

 新聞、テレビなどで紹介されたことで、鬼瓦の犬小屋を見学に訪れる人も多くいます。気軽に「鬼瓦ありますか」とお願いされた時は、思わず閉口してしまいました。もし、下ろしたものを組み上げるにしても、修理費用がだいぶ掛かるのです。

 一般の方が瓦を葺き替える際、先祖の思いを大切にする意味でも、古い鬼瓦は一つだけでも屋根に残してくださいと、提案しています。
(聞き書き・塚田裕文)
(2018年10月6日掲載)

写真=大鬼瓦を使って作った犬小屋と私
 
小笠原多加夫さん