
今回は「足の傷」の話です。足の傷の説明をなぜ循環器内科の医者がするのか、疑問に思う人が多いかもしれません。しかし、足首より先にできる傷の50%は、動脈血流障害が原因といわれているのです。
血流を改善する
「閉塞性動脈硬化症」もそうした病気の一つです。動脈硬化で血管の内側に脂のかたまりが付いて、血管が狭くなったり閉塞したりします。この病気による傷は、傷の処置だけでなく、血流を改善しないと治癒しないことが多いのです。血流を改善する役割をするのが、循環器内科や心臓血管外科です。
血流改善は、局所麻酔下で血管に2~3ミリのカテーテルを挿入し、血管の狭窄や閉塞した場所をバルーン(風船)やステントで広げる「カテーテル治療」か、全身麻酔下で、狭窄や閉塞した血管の前後を人工血管または自己血管でバイパスさせる「バイパス手術」のいずれかを行います。
閉塞性動脈硬化症の初期には、「足が冷たい」「しびれる」などの症状が出ますが、自覚症状のない人も多くいます。病気が進むと、歩いたときにふくらはぎや太ももが張ったり痛くなったりする「間欠性跛行(はこう)」と呼ばれる症状が出てきます。
さらに進行すると、安静時にも痛み、皮膚の色が紫色になり、爪が小さくなるといった症状が表れます。傷は足の指先やかかとといった血流が一番届きにくい場所にできやすいです。
閉塞性動脈硬化症かを診断するために、「足関節・上腕血圧比(ABI)」という検査が有効です。この比が0.9以下だと足の血流障害が疑われ、下肢超音波やCT、MRIといった詳しい検査をすることになります。ABIは、手足の血圧を測るだけの検査なので、先ほど述べた兆候があると思ったら、診療所や病院で相談してみてください。
感じづらい痛み
治りにくい足の傷のうち、動脈血流障害の次に多いのは、糖尿病性の場合です。糖尿病の患者さんは神経障害のため痛みを感じづらくなるので、傷ができても気付かず、気付いた時には悪化している場合もあります。そして、血糖が高い状態は免疫力が低下するので、傷が化膿しやすくなってしまいます。
ほかに、足から心臓に血液を戻す静脈の血管障害に伴うもの、膠原病などが隠れていることが多い血管炎などの場合もあります。
(2018年11月17日掲載)
三浦 崇=循環器内科副部長、心臓血管センター科長、フットケアセンター長=専門は循環器