
バッタのようなイナゴが北信濃の千曲川周辺に生息していると聞き、足を運んだ。案内してくれたのは「北信濃の里山を保全活用する会」会員の田下昌志さん(56)=長野市。支流堤防の川側に残るススキの群落や外側の除草された一帯を探索すると、背中に名の由来である黒い斑紋、目に縦じまのあるセグロイナゴを見つけた。
バッタ目イナゴ科。体長は雌の方がやや大きめで3~4㌢。淡褐色でバッタのようだが、イナゴに特有の胸部下に突起があり、イナゴとする説と、バッタの仲間として「セグロイナゴ」(セグロバッタ)と併記する説がある。
カヤが生育する草原が生息地で、国内では本州中部以南に分布、県内では北信濃だけとされる。県版レッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類に位置付けられている。
県内での初発見は、1963年8月にさかのぼる。バッタ類の研究で知られる元伊那谷自然友の会会長の小林正明さん(76)=飯田市=が学生時代、須坂市と小布施町境の千曲川堤防上で見つけた。全県を歩いた70年代後半、飯山市や栄村境の千曲川沿いでも確認した。
田下さんが今回の場所で見つけたのは2011年11月。地元の人たちに知ってもらいたいと、飯山市周辺の珍しい昆虫を調査中、2カ所で見つけた。小林さんが見つけた飯山市の千曲川堤防に姿はなく、下流の河川敷内とこの支流の堤防だった。

早速、同会総会や会報誌で紹介した。「なぜか北信濃には、ほかにショウリョウバッタモドキやオオオカメコオロギなど、珍しい昆虫がいる」と田下さん。大切に見守っていきたいと話している。
(2018年11月3日掲載)
写真上=おんぶしたセグロイナゴ。大きい下が雌=北信濃の千曲川支流の堤防で10月8日撮影
写真下=目の縦じまの線が特徴。「目は大きく目立つので天敵に分かりにくく」との説も