
ベンケイソウ科の多年草。ツメレンゲは、根元から出た葉が放射状に広がる多肉植物で、秋には高さ10~20センチ余の円筒状の花穂を立ち上げ、多くの白い花を咲かせる。和名は、葉の先が動物の爪のようにとがり、全体の形が仏像が座る蓮華(れんげ)座に似ることに由来する。
関東以西の本州、四国、九州に分布し、日当たりの良い岩場や河川の堤防、河川敷などに生育する。県内ではほぼ全県に分布するものの、数は少なく、県版レッドリストで準絶滅危惧種にランクする。
1997年発刊の「長野県植物誌」(信濃毎日新聞社刊)には「以前は観賞用として庭に植栽されたり、かやぶき屋根の上でよく目についた」と解説。かやぶき屋根の消失や、造林、開発で生育地が減り激減、絶滅が危惧されるようになってきたと続く。時代の変遷が感じ取れる。
私が最初に見つけたのは2009年、松本市の奈良井川堤防。この植物を食草とするシジミチョウ科のクロツバメシジミとともに撮影した。12年には、下伊那郡松川町の天竜川河川敷で、一面にはびこる特定外来生物のオオキンケイギクが在来希少種を駆逐している中にあった。
今年9月、花期前だったが、北信の標高約1600メートルの山岳で確認した。そして、花が咲く秋を待って訪れた場所は、長野市近郊の里山だ。どちらもごつごつとした岩場で、ちょっとしたくぼみや隙間を巧みに利用し、張り付くように息づいていた。
標高の低い河川から高山まで分布し、日当たりを好み、乾燥に強い植物。ほとんどの株は小さめだが、中には条件がいいのか群落を形成したり、花穂が30センチ近くまで伸びて横に倒れたりしている株も。猛暑にも極寒にも耐えるツメレンゲのたくましさを感じた。
(2018年11月10日掲載)
写真=岩場のくぼ地で群落を形成、高さ10数センチほどの花穂を立ち上げたツメレンゲ=長野市近郊の里山で10月19日撮影