
猛禽のハチクマはタカ科で、羽を広げると、130センチ前後にもなる。和名は、スズメバチやジバチなどハチ類を主食とすることに由来する。日本には初夏、夏鳥として南方から渡来。主に本州や北海道の森林で繁殖し、秋にはまた南へ帰る渡り鳥だ。
2008年夏、北信の山地で親が運んできたクロスズメバチの巣をくわえるヒナを、レンズを通して目撃。秋には、タカの渡りで知られる松本市奈川の白樺峠で、眼下の松本平の北方辺りから姿を現し、峠周辺を通過して南を目指すタカたちの中にハチクマも確認できた。
ハチクマをはじめ、南を目指すタカ類の秋の渡りは、北海道や東北から旅立ち、ほぼ日本海沿いの陸地を南下、新潟県妙高市から長野県に入る。北信濃西方から長野市の飯縄山、小花見高原、白樺峠を通過、岐阜県へ。さらに瀬戸内海、九州、海を越えて東南アジアの島々を目指す。
県内の通過ポイントの一つ、飯縄山麓の浅川大池。1973年ころから、日本野鳥の会長野支部が観察、記録を続けている。渡りの期間の8月下旬から10月初旬まで、数人のメンバーが毎日、渡っていくタカ類をカウントしている。
これまでの記録では、タカ類は約10種。ハチクマはサシバに次ぐ2、3番目で、「毎年決まって9月20日前後の4日間に集中する」という。今秋、私が飯山市の鍋倉山の麓にある温井の集落で撮影したのも9月19日と、符合した。
その年の気象条件や繁殖状況などで差はあるものの、渡りの総数はおよそ4千羽から5千羽。このうちハチクマは6百羽から8百羽で、15%程度という。小林富夫長野支部長は「地球規模で移動していく姿は感動的」と、シーズン中に開く観察会の参加を呼び掛けていく。
(2018年11月17日掲載)
写真=優雅に飛ぶハチクマ。旋回しながら高度を上げて山陰に消えていった=飯山市の鍋倉山麓で9月19日撮影