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25 黄綬褒章受章 ~人生で最大の喜びに まだ究めてはおらず 

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写真=工事を手掛けている文武学校(松代町)の前で=2018年10月16日

 1967年にスタートした私の「瓦人生」の集大成とも言えるのが、2014年の春の黄綬褒章を受章したことです。08年に「現代の名工」に選ばれ、13年6月に長野瓦事業組合連合会から推薦をいただいて、受章の運びとなりました。

 14年5月12日、厚生労働大臣(代理)から褒章が伝達され、胸に褒章を付けて、妻同伴でお伺いした皇居・宮殿の「春秋の間」では、天皇陛下の拝謁があり、皇居内での写真撮影もありました。

 天皇陛下から御下賜(ごかし)もいただきました。賞状には「日本国天皇は 小笠原多加夫に 多年瓦葺工として よく 職務に精励したことについて 黄綬褒章を授与する」と記されていました。県の瓦業界では初めての受章者でもあり、人生最大、望外の喜びでした。

出会いで高められる

 県内の瓦技術の発展のために設立された組合が発足する時に、事務局の一員として手伝わせていただき、いろいろな方と出会い、さまざまな仕事に関われたことが、自分を高めることになり、結果的にこの褒章をいただく一つの要因になったのだと思います。

 「現代の名工」は厚生労働大臣表彰です。同省は私の技能功績の概要に「社寺のかわらぶき技能に優れており、国重要文化財など数多くのかわらふき工事において、その技能を発揮している」と書いています。

 これも、父の兄(市太郎)で2代目皆吉の時代から、出入り職人として善光寺に通い続けさせてもらったからだと思います。私は、いい仕事をしたいと思ったら、多少持ち出しになっても、思ったように仕上げたいと考えていて、その一つが、善光寺、大勧進の紫雲閣の工事でした。

 見積もりでは昭和瓦を使うようになっていました。しかし、平成瓦の方が重厚感が増し、建物にしっくりくると思ったので、設計事務所とゼネコンに直談判して変更してもらいました。もちろん、予算も結構オーバーしましたが、その分は私が負担しました。

 経験上、一つの仕事をしっかりすると、どんどん仕事がつながっていきます。今、経営の多角化へ変更しているお店も増え、もちろん成功しているところもあります。

城や塔の仕事も

 しかし、私は職人にこだわりたいので、瓦一本でやっていくことに決めています。5代目の晋も同じ考えを持っているらしく、大変うれしく、親父冥利に尽きます。

 若い職人に言いたいのは、「若い時はお金のことは考えず、技を覚えろ。仕事を身につければお金がついて来る」です。ただ、一人でやろうとするのではなく、仲間と協力し合っていくことが大事です。出るくいは打たれますから。

 周りに迷惑をかけるようになったら引退しようと思っています。けれども、まだ仕事を究められていないので、その二文字を口にするのは先になります。これまで、国史跡や重要文化財の社寺や建造物の仕事を請け負ってきましたが、手を付けたことのないお城や三重の塔、五重の塔といった塔の瓦を葺いてみたいですね。
(聞き書き・塚田裕文)
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小笠原多加夫さん工事経歴

康楽寺(本堂)本葺き        1981年
普願寺(山門)本葺き         83年
妙相寺(本堂)            83年
盛伝寺(仁王門)本葺き        86年
法泉寺(本堂)本葺き          86年
盛伝寺(不動専堂)          87年
善光寺大勧進(表書院)        87年
北野美術館(展示館)         87年
善光寺大勧進(奥書院)        89年
松代新御殿(四、五番土蔵)      89年
善光寺大勧進(学寮)      90,91年
善光寺大勧進(本願)本葺きと塀 90年
盛伝寺(客殿)            92年
横田邸(居宅、門など)         92年
善光寺大本願(寿光殿棟)       93年
北野文芸座                    94年
善光寺大勧進(行在所)        94年
池田邸(門)旧飯山城門        95年
善光寺大勧進(紫雲閣)        96年
善光寺大本願(本堂本葺き棟)  96年
善光寺(講堂玄関)本葺き       96年
松代文武学校(槍術所など)      97年
松代荒神堂                    99年
松代白井家(表門など)         99年
西光寺(本堂)              2000年
西光寺(太子堂)               02年
圓通院(本堂)                02年
諏訪温泉寺(仁王門)          02年
圓通院(庫裡)                03年
諏訪慈雲寺(中門)            03年
●笑寺(鐘楼)                04年※●玄に少
善光寺(講堂など)葺き替え    05年
中條埴志那神社(拝殿)        05年
松代新御殿解体                05年
善光寺大勧進(表大門)本葺き  06年
常恩寺(十二観音堂)          07年
松代矢沢家(表門)            07年
松代新御殿(六、七番土蔵)    08年
善光寺大勧進(内仏殿)        08年
松代旧前島家                  09年
信叟寺(山門)本葺き          09年
善光寺大勧進(本堂)本葺き    10年
徳寿院(小御堂)              11年
松代新御殿(役人詰所)        12年
桃源院(佐久・本堂など)      12年
旧松代藩(鐘楼)              12年
十念寺(観音堂)              12年
松代文武学校(文学所)        13年
善光寺大勧進(赤門)          14年
旧中込学校(佐久)            14年
如法寺(山門)                15年
金具屋(鎌倉風呂)            15年
善光寺大勧進(北土蔵)        15年
西光寺(宝庫)                15年
林正寺(本堂)                16年
長国寺(開山堂)              17年
松本神社(表門)              17年
林正寺(山門)                18年
松代文武学校八棟解体          18年

(2018年11月3日掲載)
 小笠原多加夫さんのシリーズはおわり
 
小笠原多加夫さん