
紅葉見物を兼ねて、10月下旬の平日、須坂市の米子大瀑布を訪れた。「日本の滝百選」の一つで、国指定名勝でもあるこの滝は、新緑や盛夏のころに3回行ったことがあるが、錦秋のこの時季は初めてだ。
山仲間と2人で、8時に長野市内を出発。須坂市街地からくねくねの林道を10数キロ上り、終点の米子大瀑布駐車場を目指す。
紅葉最盛期のこの時季、土日曜はマイカー規制で、日帰り温泉施設「湯っ蔵んど」からシャトルバス利用となる。平日なら、1台500円の利用料で駐車場まで行ける。ただ、混雑して1~2時間待ちになることも。
この時間だと待たされることもなく、9時過ぎに駐車場に到着。約50台収容のスペースには10数台が。地元の長野ナンバーが多いが、県外ナンバーも少なくない。

駐車場から米子不動尊奥之院に向かい、その先の不動滝と権現滝を眺め、硫黄鉱山跡地を回って駐車場に戻る約2時間の周遊コースをたどる予定だ。
歩き始めて間もなく、渓流に架かる橋を渡りながら進む。30分ほどで奥之院に到着。今はうらぶれた感じだが、「日本三大不動尊」の一つ。毎年6月14日の開山祭(お山登り)と、9月14日の閉山祭(お山降り)には多くの信者が集うという。
お堂の右脇を抜け、少し登ると不動滝に。落差85メートル。音もなく、レースのように霧状に落ちる姿は優美でもある。夏場は滝に打たれる行者が見られたが、さすがに今はいない。東京から来たという40人ものツアー客とすれ違った。
その先を少し進むと、樹間に権現滝が現れる。こちらは落差80メートル。手前に赤や黄の葉が映え、ごう音とともに直線状に滝つぼに落ちる姿は豪快だ。
二つの滝を眺めた後、奥之院近くの旅館跡に戻り、さらに先へ進むと米子鉱山の跡地に。江戸時代から1960年まで硫黄を採掘し、精錬していた一帯では、最盛期に1500人が暮らし、分教場や診療所もあったという。
ここからの眺めは、写真撮影の絶景ポイントだ。歩いてきた方向を振り返ると、対岸の岩壁から2条の滝が流れ落ちる姿がパノラマのように広がる。周囲の色とりどりの紅葉が、また素晴らしい。

このまま周遊ルートを下るだけでは物足りないため、鉱山跡から南側の登山道を浦倉山と根子岳方面への分岐まで行ってみる。
再び鉱山跡に戻り、滝と紅葉を眺めながら昼食。分教場跡近くにあるあずまやから、二つの名瀑を目に焼き付けた後、黄金色に輝く林の中を下山。駐車場から須坂市街地へ下る林道でも、何回か車を止めて、山肌を染める紅葉の写真撮影に没頭した。
(横前公行)
(2018年11月10日掲載)
林道米子不動線は11月12日(月)15時から冬期閉鎖。
写真上=秋色の米子大瀑布。不動滝(右)、権現滝(左)
写真下=山肌を染める色とりどりの紅葉