134 非結核性 抗酸菌症 ~自然界に存在する菌 中高年の女性に増加

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 「非結核性抗酸菌症」という病気を知っていますか。これは、「非結核性抗酸菌」という細菌による感染症です。この菌は、結核菌、らい菌を除く抗酸菌のことで、100種類以上あります。日本ではMAC菌と呼ばれる抗酸菌が原因であるケースが7~8割を占めており、「MAC症」とも呼ばれます。

感染初期は無症状

 この菌は、自然界の水や土、水道水や風呂場などに存在します。菌を含んだほこりや水滴を吸い込むことで肺に感染しますが、結核菌のように人から人へ感染することはありません。

 この感染症になりやすい人は、以前は肺の病気がある男性が主でしたが、最近は健康な痩せ形の中高年女性が増えています。これは、痩せていると肺の一部が潰れやすくなること、閉経で女性ホルモンが減少すると肺の免疫細胞機能が低下することなどが考えられていますが、はっきりした原因はまだ分かっていません。

 感染初期は無症状です。多くは、健康診断などで偶然発見されます。進行すると、長引くせきやたん、微熱、体重減少、倦怠感などが表れ、血痰が出たり喀血したりする人もいます。風邪のような咽頭痛、鼻汁、頭痛などはありません。ただちに命に関わることはありませんが、最終的に呼吸不全で亡くなる人もいます。

薬を長期間内服

 診断は、たんから菌が検出されるかを調べます。たんが出にくいときは、食塩水を霧状にして吸入し、その刺激で出してもらう場合、気管支内視鏡で直接肺の中から菌を採取する場合があります。参考のため、血液検査でMAC抗体を調べる場合もあります。

 治療は通常、3種類の薬を数個ずつ、菌が消えてから約1年間内服し続けます。ただし、治療をしない場合もあります。多くの場合、進行がゆっくりで症状が軽いこと、完治(菌を消滅)させる薬がまだ開発されていないこと、長期間内服するため副作用が出る可能性が高いことなどが理由です。

 一方、進行が速い、症状が強い、血痰や喀血がある、エックス線で肺の空洞や病気の範囲が広い場合は、ただちに治療を始めます。治療中の患者さんは、ほこりが舞うような作業や浴室の掃除などをする時には、マスクを着用した方がいいでしょう。浴室は常に換気して、浴槽の水は早めに排水し、まめに交換しましょう。
(2018年12月1日掲載)


滝沢  秀典=呼吸器内科副部長=専門は呼吸器
 
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