
中野市立ケ花の千曲川右岸。篠井川が合流する一帯は、水辺の自然を感じながらウオーキングや魚釣りの人たち、野球やソフトボールをする少年たちでにぎやかだ。
上信越道が篠井川を横断。河川の氾濫防止のため1976年に完成した「篠井川排水機場」の威容が目を引く。2008年にニホンギツネが営巣した北側の丘陵には、事業所の建物が立つ。千曲川を斜めに橋が横切り、丘陵をぶち抜くように北陸新幹線が走る。かつての光景は一変した。
2018年初夏、久しぶりに訪れると、丘陵の事業所脇の樹林帯に50を超す巣、アオサギの集団営巣地ができていた。
身近で子育てに必要な餌を得られるからだろうか。千曲川本流にはコイやバス類、支流の浅瀬にはフナやハヤ、ナマズなど、魚が豊富だ。アオサギのほか、ダイサギ、コサギをはじめ、カイツブリ、カワウなど魚食性の野鳥が多く集まる。時折、小鳥を狙う猛禽のハヤブサなども姿を現す。

独特のブルーの色彩が魅力的なカワセミや大型のヤマセミを写真に収めようと、写真愛好家たちも集まってくる。中野市や小布施町の地元をはじめ、長野市内の77歳の男性など、常連は10人余に上る。
車で数分という中野市草間の農業丸谷郁雄さん(87)は、ほぼ毎日、やって来る。65歳から写真を始め、風景写真を撮るため、全国を巡り歩いたが、数年前から足元の野鳥撮影に転向した。主にカワセミ、ヤマセミを狙う。「飛んだり、餌を取ったりした瞬間を収めるのが醍醐味」と話す。
「よりよいショットを捉えたい」と、丸谷さんは仲間数人と17年の梅雨明け、鳥たちから身を隠して撮影する「隠れ場所」を、管理する県に届け出て、川べりに作った。骨組みはリンゴ栽培に使うパイプやイボ竹、覆いは黒色の寒冷遮など農業資材を利用した簡素な作り。野鳥の会のアドバイスで、レンズを出す穴を開け、完成した。カワセミの交尾や飛翔など、お気に入りのショットが撮影できた。

「野鳥を撮影したい人に、気軽に利用してもらう」と丸谷さん。仲間同士で野鳥の話題や情報を交換する場にもなり、交流の輪が広がっている。
(2019年1月1日掲載)
写真上から
コサギ=羽繕いをしたり、脚と羽を伸ばしたりするコサギ。近年は県内の一部で減少傾向にあり、県版レッドリストでは準絶滅危惧種=11月22日12時42分
アオサギとダイサギ=アオサギ(手前)とダイサギ(奥)。魚をあさっているのか、羽を広げてあちこちを動き回る=11月22日14時11分
カワウ=何度も水に潜って魚を捕まえるカワウ。間もなく、魚がいなくなったのか、水面を脚で蹴って飛び立った=11月22日14時3分

カイツブリ=潜水を繰り返し、水中を勢いよく餌を追ううち、魚を捕まえたカイツブリ=12月5日15時21分
オオバン=さまざまなごみが漂う流れの脇で、藻などをあさるオオバン=12月9日12時14分
