
今年の干支イノシシ。「見た」「畑を荒らされた」などの話はよく聞くが、実際に姿を見る機会はあまりない。
昨年11月初旬、長野市の県庁西側を流れる裾花川の河川敷で、野鳥撮影をしていた近くの山崎邦昭さん(79)は、2匹のイノシシが浅瀬に出てきて、石をひっくり返しているところを写真に収めた。4日連続して出没した。中旬には、少し上流で別のアマチュアカメラマンが撮影した。
私も数回足を運んだが、見ることができないまま。半ばあきらめかけていた12月20日、野鳥撮影によく足を運ぶ中村達也さん(66)=同市松岡=から連絡が入った。21日には近くの嶋田正子さん(76)が散歩中、同じ浅瀬で目撃。今度こそと、暗いうちから待ち構えた23日9時過ぎ、やっと出合えた。

2匹のイノシシが、本流を挟んだ対岸にいた。川岸にたまった漂流物をあさっている。距離は約15メートルと近いが、本流が壁となり、イノシシは逃げない。こちらも恐怖心はない。
翌日も同じ場所に出て、両日とも約1時間間半、居続けた。直近から、めったに見ることがないさまざまな生態を、写真に収めることができた。
体長は1メートル未満で2、3歳ぐらい。疥癬症で毛が抜けて痛々しい。クルミだろうか、大きな口を開け、何かかたい物を奥歯で砕くしぐさを何回も繰り返す。めぼしい物は食べ尽くしたのか、上流に向かい、急峻な崖を登って山に帰って行った。

時に市街地まで侵出する。長野市いのしか対策課によると、目撃・出没情報は2013年度から16年度まで、年40~98件だったが、17年度は162件と激増。有害鳥獣として捕獲した数は07年度に約300匹だったが、13年度ころから増加傾向で、17年度は約900匹と、約3倍になった。
(2019年1月12日掲載)
写真1=【あさる】
河原に出没した2匹のイノシシ。ジョギングや散歩をする人、カメラマンがいても気にすることなく、ひたすら鼻と口で獲物をあさり続ける

写真2-01、2-02=【強じんさ】
獲物を探すうち、頭ほどある石を鼻と口を突っ込み(写真上)、ぐいっと持ち上げ簡単にひっくり返した(写真下)
写真3=【前脚で押さえる】
見向きもしなかったリンゴを食べる。食べやすいように前脚で押さえて、一口ずつ時間をかけて食べた
写真4=【警戒】
本流を隔てた向こうとはいえ、時折顔を上げてこちらを見て警戒する様子
