
体の中で、けがをしやすい部位の一つが頭です。頭を打って受診する患者さんは、小さな子どもと、最近では高齢者が増えています。
乳幼児では、つかまり歩きができるようになった時期に、頭を床や壁にぶつけてしまうことがよくあります。周りの大人が目を離した隙に、ソファや階段から落ち、頭を打つ場合もあります。
急いで受診の場合
頭を打った時に、特に急いで受診した方がいいのは、
▽頭の皮膚からの出血が止まらない場合
▽意識がぼうっとして、目がうつろな場合
▽けいれんを起こした場合―です。迷わず救急車を呼んでください。
一方、頭を打った後も機嫌がよく、おっぱいを飲んだり食事を取ったりできる、いつも通り遊んでいる―といった場合は、心配は少ないと考えられます。ただし、その日は寝ている間も、一度は様子を見てあげてください。翌朝もケロっとしているなら、その後の心配はほとんどいりません。
脳振とう後に注意
頭を強く打った場合は、数日から数週間程度、頭痛が残ったり、目が回る感じがしたりすることがあります。このような状態を脳振とうと呼びます。頭に加わった強い衝撃で、脳が本来の調子で働けない状態です。無理をせずに、症状がなくなるまでは運動を控えて、回復するまで待ちましょう。
脳振とうの状態でスポーツをすると、さらにけがをしやすくなったり、あるいは大けがにつながったりする可能性があります(セカンドインパクト症候群といいます)。ラグビーなど他人と接触するスポーツ、スキーやスノーボードなど大きな加速度が体にかかるスポーツでは、セカンドインパクト症候群の予防が重要です。
弱くても脳内出血
足腰の筋力が弱まる高齢者では、つまずいたり足元を滑らせたりして転倒し、頭を打つことがあります。抗血栓薬や抗凝固薬など、血液をサラサラにする薬を飲んでいる人は、尻もちや頭をコツンと弱くぶつけた程度でも、脳内で出血することがあります。こうした場合は、その日のうちに受診してください。
けがをしてから数週間から数カ月の後に、徐々に頭に血液がたまることもあります。頭痛がしつこく残る、歩き方や話し方が以前と変わった―などの場合は、医療機関にかかってください。
(2019年2月23日掲載)
児玉 邦彦=脳神経外科部長、脳血管内治療科科長、脳卒中センター科長=専門は脳腫瘍、脳血管障害、脳神経外科、神経生理学的モニタリング