記事カテゴリ:

2019年冬 05 ホンドタヌキ ~争いなく山里にすむ

0216doushoku.jpg
 漢字で書くと、「犭」(けものへん)に「里」で「狸」。昔から山里にすむおなじみの動物だ。

 最近は、市街地でも見かけた話を耳にする。2月5日、長野市三輪の民家庭先で花崎秀紀さんは、疥癬(かいせん)症で毛がほとんど抜け落ちた痩せた1匹を目撃。昨年暮れには、同市石渡の中島弘さんが早朝、自宅の庭先でまるまると太った成獣を、2回見掛けた。

 イヌ科で体長40~80センチ。重さは3~6キロほど。生活圏は、民家が点在し、周りに田畑や果樹園などが広がる山里の一帯だ。人や犬などに追われる危険があるものの、捨てられた残飯や、トウモロコシ、桑や柿の実、カエルなど、餌を得やすいためだとみられている。

 もともと夜行性で、「日没前後の約1時間以内に行動を開始、日の出前には泊まり場に帰る」。「信州のタヌキ」(郷土出版社、1998年刊)を著した関谷圭史さん(63)=上田市=が1990年4月から1年余、東御市和地区で13匹のタヌキに発信機を付けて、行動を追跡した結果だ。

 主に、民家の縁の下や石積みなどの人工物を泊まり場として渡り歩く。行動範囲は個体差があるが、約6ヘクタールから200ヘクタール。複数のペアや単独の雄など、重なるように生活しているが、一定の距離を置きながらお互いの行動を観察し、隙間を縫うように慎重に行動する。泊まり場所や糞(ふん)をする場所を共有し、「争いは観察されなかった」という。

 これらを元に関谷さんは08年から4回、皇居内のタヌキを調べた天皇陛下と、静養先の軽井沢で懇談する機会に恵まれた。ほかのタヌキとの交流や食べ物など「都会のタヌキの生活の様子が分かり、大変勉強をさせていただいた」と振り返っている。
(2019年2月16日掲載)


写真=糞がたまった近くに備え付けた赤外線センサー付きカメラが捉えたタヌキ=長野市上野の土京山山中で1月13日1時37分
 
北信濃の動植物