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2019年冬 06 カラス ~深夜まで明るい市街地で

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 長野駅東口に昨年夏ごろから集まり始めたカラス。秋に向け数が増え、11月初旬の夕暮れ過ぎ、一帯の街路樹は真っ黒な鳥たちで所狭しとにぎやかだった。

 2月10日の夕暮れ、足を運んだが、気配がない。北へ向かった数羽の群れを追跡すると、長野市役所の北側、早苗町一帯に場所を移動していた。

 新幹線沿いの電線にびっしり。早速ストロボで撮影を開始。光を危険と感じたのか、一斉に飛び立つ。数百から千羽は超すだろうか、逃げるように、近くのビル最上部のへりや電線に止まる。そっと近づき、撮影を繰り返すが、姿を覚えられたのか、カメラを隠しても撮る前に逃げられる。

 「2月初めにやってきた。初めて」と住民。2階の窓越しにじっと観察する男性の姿も。電線下のアスファルトはふんで汚れ、私の車の屋根も被害に遭った。

 和名でカラスという鳥はいない。国内には、くちばしが太いハシブトガラスと細いハシボソガラスの2種を主に、ワタリガラス、ミヤマガラス、コクマルガラスの5種が分布する。

 市生活環境課によると、東口辺りに集まり始めたのは昨年7月ごろ。ハシブトガラスが主といい、10月に対策会議を開き、強力なライトを照射して追い払ったり、街路樹の枝を剪定(せんてい)したり。ねぐらとして夜間に集まるだけで、被害の主なものはふん害と鳴き声の騒音だ。

 「カラスの教科書」(雷鳥社刊)の著者、東大総合研究博物館の松原始さんによると、「ねぐらは天敵から身を守り、餌の情報を得るためではないか」。深夜まで明るくにぎやかな市街地が、それを満たし始めたということか。繁殖期に入る3月には、ねぐらは徐々に解消されるという。
(「冬」シリーズおわり)
(2019年2月23日掲載)

写真=車の往来が激しい幹線道路沿いの電線にびっしりと止まるカラス=長野市早苗町で2月10日19時35分
 
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