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42 山梨県甲府 ~開府500年の歴史たどる

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 甲府市は今年、「開府500年」の記念事業を展開している。戦国時代の1519年、甲斐の大名武田信虎が館と城下町を築き始めてから500年になる。

 長野から特急「しなの」「あずさ」を乗り継ぎ、2時間と少し。甲府駅の中で、開府500年の記念展示が行われている。町の歴史を地元のボランティアガイドが説明してくれる。

 信虎が築いた館は今、信玄を祭神とする武田神社になっている。駅から北へ真っすぐ延びる「武田通り」を2キロ。水をたたえた堀は、館の時代のままという。

 敷地内の宝物殿では、信玄の書状や「風林火山」の軍旗など、武田家伝来の資料を展示。上杉軍の「毘」の字の旗もあった。川中島の戦いで妻女山(松代町)に陣を構えた上杉軍は、武田軍に知られぬよう山を下った後も兵がいると思い込ませるため、軍旗を妻女山に残した。それを武田軍が持ち帰ったという。
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 武田氏滅亡後の豊臣秀吉の時代に、南に甲府城が造られた。関東へ封じた徳川家康を西から監視する拠点だったが、完成時の城主浅野長政は関ケ原の戦いで徳川方につき、江戸時代は一時期を除いて徳川氏の城となった。

 甲府城は敷地20ヘクタールと大きかった。甲府駅も山梨県庁も、元は城の敷地。城域の3分の1ほどは舞鶴城公園として残り、立派な野面積みの石垣などを見ることができる。

 県庁内に「山梨ジュエリーミュージアム」がある。古くから水晶が採れた山梨県は、宝飾産業の大産地。バブルがはじけてから生産が減少しているものの、国内のジュエリーの2割は山梨産だ。県立の宝石美術専門学校があり、ミュージアムはその付属施設。展示されている地元職人の美しく精緻な作品を、女性は見飽きないだろう。

 街には「岡島」と「山交」の2つの地元百貨店がある。ご多分にもれず、買い物客の足は中心市街地から郊外の大型ショッピングセンターに移りつつあるといい、百貨店はよく踏ん張っていると言ってよさそうだ。ただ、2027年にリニア中央新幹線が開業すると、山梨県内から東京まで20分前後。地元ガイドは「買い物客が東京へ行ってしまう」と街の行く末を心配していた。

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 東の郊外に甲斐善光寺がある。川中島の戦いのころ、信玄が善光寺の本尊仏や大本願上人をここに移して開いた。今は善光寺の前立仏として作られた阿弥陀三尊像が本尊だ。

 寺号は「定額山善光寺」で、長野と同じ。本家より小規模ながら、戒壇巡りもできる。不思議な既視感があった。
(竹内大介)
(2019年2月9日掲載)

写真上=武田神社となっている武田氏3代の居館「(躑躅)(つつじ)が崎館」跡
同左= 国重要文化財の甲斐善光寺金堂
 
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