記事カテゴリ:

2019年春 02 シュンラン ~人気の山野草 林で陽光独り占め

0413doushoku.jpg
 善光寺平の北方、里山の雑木林。ダンコウバイの黄色だけが目立つ殺風景な林の中で、春の陽光を独り占めするように、シュンランが花を開かせて、春を告げていた。

 ラン科で、3、4月に咲くことから和名は「春蘭」。北海道から九州の低山帯の乾燥した落葉樹林内に生育し、長野県内も全域に分布する。葉は線形で20~50センチ、高さ10~20センチほどの花茎の先端が淡い黄緑色で、唇弁に濃い赤紫色の斑紋がある径3~5センチほどの花を一つ付ける。

 撮影したのは、山城跡を示す石碑や案内板が立つ標高500メートル余の山頂付近。一帯で2004年と15年に見かけたという知人の情報を基に探すと、近くの山道などにそこそこの数の株が確認できた。

 ランの女王とされる大型のアツモリソウのような派手さはないものの、ラン科特有の花は魅力的で、山野草愛好家に人気だ。ネットで検索すると、日本春蘭のほか、韓国、中国春蘭などがある。花の形はほぼ同じだが、色や斑紋など多彩。園芸品種として販売もされ、奥深い趣味の世界があることに驚かされた。

 「10年ほど前、名古屋で開かれた日本の蘭展で、花、葉、茎が紫色の『天紫晃』という珍しいシュンランに出合った」と知人。居合わせた中部蘭種会長に聞くと、「最初に採取されたのは、確か信州。戦前、昭和初期ごろに飯山の山中で」。早速、飯山市立図書館に尋ねたが、確認できなかったという。

 山野に自生する株はごく普通だが、長野県植物誌(信濃毎日新聞社・1997年刊)には、「乱獲により減少」と記されている。花が咲き始めたころ、2カ所で鉢植えのシュンランが売られていたのを見た。なんと、1鉢450~700円。「やはり野に置けレンゲソウ」。野生のものは自然の中でこそ輝くと、あらためて思った。
(2019年4月13日掲載)


写真=枯れ葉の下から長い葉、中ほどから花茎を伸ばして花を咲かせたシュンラン=善光寺平北部の里山で4月4日撮影
 
北信濃の動植物