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2019年春 03 カタクリ ~春の妖精 小学生ら地元住民が育む

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 長野市旭山山ろくの群生地。1993年から加茂小学校児童、2002年ころから地元新諏訪の住民らによって手厚く保護され、今年も4月初めから咲き始め、6日、7日には「カタクリまつり」も開かれ、多くの人たちが春を楽しんだ。

 ユリ科で北海道から九州の落葉樹林の林床に生育し、長野県全域に分布。樹木が芽吹いて勢力を増す初夏には地上部が枯れ、「スプリングエフェメラル(春の妖精)」と呼ばれる代表的な春植物の一つだ。

 受粉を昆虫に頼る虫媒花で、開花と合わせるようにチョウも羽化、蜜を吸いに飛来する。チョウは養分を蓄えて産卵に備え、カタクリは受粉をしてもらう共生関係にあり、ミツバチやクマバチ、マルハナバチなどもやってくる。

 開花時期は2週間程度と短い。戸隠地質化石博物館の植物担当研究員、中村千賀さんによると、受粉した実の中の種は約50個。熟すと、少しずつ落下し、地上では「待ってました」とばかりにアリがやってくる。アリの種類は地域や場所によってさまざまだが、3ミリほどの小さな種の先端部の物質(脂肪酸)が目当て。アリは巣の中に運び込んで物質部分を分離し、残った部分を外に運び出す。

 運び出された種は翌年発芽、成長を繰り返し、花が付くのは7、8年後。カタクリはこのサイクルで長い年月をかけ、じわじわと増え、群落ができていく。

 群生地には、アリと種の関係やカタクリの特徴を解説した大きな看板が立つ。林の中で汚れが目立っていたが、4月5日、加茂小6年生31人がスポンジと雑巾で磨いてきれいにした。8日からは3年と5年、1年と6年、2年と4年の組み合わせの姉妹学年児童らが訪れ、絵を描いた。

 昆虫に加えて、地元の人たちの熱い思いが、カタクリを育んでいく。
(2019年4月20日掲載)


写真=カタクリの花に蜜を求めてやってきたミツバチ。花から花へ移り受粉の手伝い=長野市旭山の群生地で4月7日撮影
 
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