
春のトレッキングシーズンを控え、3月後半の日曜日に山仲間たちと足慣らしに長野市街地の裏山に出かけた。雲上殿から大峰山(830メートル)―地附山(733メートル)を回るコースで、見どころの多い手軽な山歩きを楽しんだ。
朝起きると、外は雪。どうしようかと思っているうちに雪はやみ、青空も見えてきた。9時に雲上殿下の駐車場に集合。展望道路を少し西側に歩き、歌碑が立ち並ぶ歌ケ丘からまず大峰山に向かう。
赤松と雑木林の中の山道はうっすらと雪化粧し、ぬれた落ち葉が靴にまとわる。ほぼ直登のコースを登り詰め、山頂部の大峰城直下の休憩広場に出た。
1962(昭和37)年に観光用に建てられた鉄筋コンクリート製の天守は、白壁に赤い欄干が映える。内部には「チョウと自然の博物館」があったが、シャッターが下りたままになって久しい。

城の脇から下り、地附山へ向かう途中の分岐を下方に進み、謙信物見の岩へ。高さ5メートルほどの岩がそそり立ち、周辺からは善光寺平が一望できる。戦国時代に上杉謙信が岩の上に立ち、武田軍の動静を探ったといわれる。直下の岩壁は岩登りの訓練場だ。
再び分岐に戻ると、地附山方面の入り口にはテープが張られ、通行止めになっている。この道は地附山トレッキングコースではない、という意味らしい。
そのまま進んでいくとスキー場の跡に出た。
昔は小学生のスキー教室が開かれ、日曜日は家族連れでにぎわったという。今もリフトのモーター跡が残る。
少し下ると、テレビ局の送信塔があり、手前の広場は県警のモトクロス練習場になっている。周辺には、かつて雲上殿の脇から架けられたロープウエーの山頂駅跡や観光リフト、遊園地、動物園の跡もある。高度経済成長期に一大レジャーランドが計画されたようだ。
一帯を見た後、小さな石の祠(ほこら)がある地附山の山頂部へ。ここで昼食。真正面に飯縄山を望む「ヤッホーポイント」で友人が大声で叫んでみたが、こだまは返ってこなかった。

昼食の後、桝形(ますがた)城跡へ。途中に釣堀池の跡地や前方後円墳もある。旧バードラインを横切った先の城跡は戦国時代の山城で、土塁や曲輪(くるわ)、堀切などが見て取れる。
帰りは85(昭和60)年の大地滑り跡に造られたつづら折りの道を下る。途中に、東京スカイツリーと高さが同じ地点(634メートル)の看板も。斜面に植えられた雑木が芽吹き、遊具の置かれた公園が親子連れでにぎわう日もそう遠くない。
(横前公行)
(2019年4月6日掲載)
写真上=山頂部にある大峰城
写真中=謙信物見の岩
写真下=山頂のヤッホーポイントから望む飯縄山
